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10/19(Wed) 17:37
節制ちゃん

その思いが伝わったのか、彼女は頬をほんのりと朱色に染めてはにかむ。
…くそぅ、学校休んで今すぐ抱き締めたい。
しかし、公私混同はいけない。
真面目に学校へ行こう、流石に二浪は避けたいし。

「それじゃあ、遅刻しちゃうからもう行くね。留守番頼んだよ」

頭から手を離してしばしの別れを告げ、俺は学校に向かい歩き出した。
数歩進んだ辺りで携帯電話に着信が入る。
取り出して、確認。

『返事を返したい時は、尻尾を触りながら言葉を強く念じてたも』

成る程ね…便利なものだ。
試しに返信をしてみる事に。
『了解、と。そういえば、いってらっしゃいのキスはないの?』と。

振り返り、反応を確認する。
すると、顔を赤くした蓮香は部屋に戻ってしまった。
そして、携帯電話が鳴る。

『ウツケ者めっ、早く行ってくるが良い!』

おー、伝わった伝わった。
これで蓮香と四六時中話していられるね。
…楽しく過ごせそうだ。
蓮香の反応に頬を緩ませ、俺は学校に足を向けた。





俺の通う、『国立・祈常高等学校』
自由な校風と、そこそこの偏差値。
何処にでもありそうな普通の学校だが、二つほど得意な点がある。

一つは、一年に四回ある学校行事。
稲荷神社への参拝と清掃である。
公には、社会勉強の一環ということになってはいるが…実際、一年に四回はやり過ぎである。
何とも嘘臭い。
一説では、妖怪狐が裏で学校を操っているとか…。
真偽は定かではないが、何とも興味深い話だ。

二つ、異常とも言える内定率。
昔かららしいが、祈常高校出身者は進学にしろ就職にしろ、何故か高確率で受かってしまう。
この不景気ですら、内定率100%を維持している奇跡。
人は、それを『祈常の奇跡』と呼ぶ。

…と、まぁ…そんな特異性のせいか、毎年受験者が後を絶たない。
主に内定目当てで。

「まぁ、俺は…名前で選んだようなアホなんだけど。祈常だよ?平仮名で『きつね』だよ?入学しかないよね」
なんて、我が校について思い返しつつ、独り言。
他から見たら、ただのイタい人。はい、自覚しております。
周囲に人がいなくて良かったと思う。
そんな、イタイ独りぼっちの通学を繰り広げていたら、噂の祈常高校が見えてきた。
さぁ、今日も真面目に頑張ろう。

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10/19(Wed) 17:41
節制ちゃん

生徒はおろか、先生すらまばらな時間。
俺は自らの教室に足を進める。
…うん、快適。
廊下の真ん中を優雅に歩く。
そして、誰もいないであろう教室につき、引き戸を開け、中へ。

「………」
「あ、八尾くん。おはよう、今日は遅いのね」

と、思っていたのに先客がいた。
最悪である。
とりあえず、俺は素っ気なく挨拶を返す。

「おはよう…」
「ねぇ、良かったら手伝ってくれない?朝のホームルームで配るプリントを先生に頼まれてコピーしに行くんだけど…部数が多くて」

と、俺の朝の楽しみである静かなる一時を邪魔する非常識…ではないか。
とにかく、図々しく、かつ馴れ馴れしい…でもないな。
嫌ってる俺の勝手な言い分だ。

「?…どしたの、八尾くん…ボーッとして」
「…あまり近付かないでくれ」

近付いて、俺の顔を覗き込むので、やんわり激しく拒絶する。
前言撤回。
この図々しい、かつ馴れ馴れしい女は、俺と同じく一浪中のクラス委員長。

「あ、ごめん…近付かれるの嫌いなんだよね」
「…行くなら早く行こう、委員長。時間が惜しい」

名前は知らない、興味もないし覚える気もないから。
だから、俺は留年前から同じクラスであるこの女を、未だに委員長と呼んでいる。

「もぉー、八尾くん。もう私は委員長じゃないんだから、名前で呼んでくれたっていいじゃない?」
「はい、無駄話は厳禁。資料室へ急ごう」

冗談めいた笑顔で訴える彼女を流して資料室へ…。



「…で、コピーするのはどのプリント?」
「うん、これと…これ、あと…これもだね」
「…全部じゃないか」
「そーともいう」

資料室に着いた俺は、委員長から素早くプリントを受け取り、慣れた手つきでコピーをかけ始める。
プリンターの機械音だけが、部屋に響く。

「ねぇ、八尾くん。前々から聞こうと思ってたんだけど」

静寂を打ち破り、彼女は俺に問いかけてきた。
それを無言で受け取りつつ、コピーの終わったプリントを片付け、次のコピーを開始する。

「私の名前、知ってる?」
「いや、全く」

向き直ることなく即答すると、後ろから委員長のため息が聴こえてきた。

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10/19(Wed) 17:46
節制ちゃん

「やっぱり…通りで変だと思ってたんだよ。留年してからも委員長ってしか呼んでくれないし」
「まぁ、それは残念だな。…ん、コピー終了、次」

ちょっと可哀想だが、無視。
今は、一刻も早くこの状況から抜け出したい。

「………」
「………」

沈黙。
再び、部屋はプリンターの機械音で満たされる。
静かで実に結構。

「ねぇ、八尾くん」
「…なに?」
「もしかして、“あの事”まだ引きずって」

ピーッ、と終了を告げる電子音が会話を遮る。
俺は、その音に従い、排出されたプリント達を綺麗に揃えて抱えた。

「よし、コピーは全部終わったし…行こう。ホームルームが始まる」
「う、うん。そうだね」

俺が促すと、委員長は眼鏡をかけ直してから一緒に資料室を出た。

「で、さっき何か言いかけたけど…何?」
「え?…ううん、何でもないよ。今日も一日頑張ろう!」

妙に明るく振る舞う委員長。
…気を遣ってくれているのだろう。
だとしたら、少し悪いことをしたな。

『彼女は全く悪くないのだから』



物思いに耽っていたら、もう教室前についていて。
中には既に数名の生徒がいて、雑談を繰り広げていた。
ありったけの嫌味を視線にこめて委員長を見ると、彼女は悪びれもせずに笑って『ごめん』なんて言ってくる。
俺は静かにため息をつき、彼女と一緒にプリントを配り始めるのだった。
…俺の至福の一時が…ぐすん。


そんなわけで、あっという間に生徒は集まり、教室は喧騒に包まれる。
俺はプリントを配り終え、自らの席である窓際の一番後ろへ。
ため息混じりで席に座り、俺は窓の外を眺める。


『あれから、もう半年にもなるのか…』

俺と委員長、そして根子月もちょっと噛んでいる“あの事件”。
そのせいで、俺は嫌になるほど学校内の有名人になり、その上、留年してしまった。
その事件とは………。



「こらー、騒いでないで各自席につけよー。出席取るから、早くしろー」

やる気のない担任の声に、喧騒が止む。
そんな担任の登場で、俺の回想も中断された。



「はい、じゃあ出席取るぞー…安部ー」
「はーい」

そんな、毎朝恒例の点呼を眺めつつ、俺は隣の空席を横目で見る。

…またか。

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10/19(Wed) 17:50
節制ちゃん

「…それじゃ、次。根子月ー、来てるかー?」

返事はない。
それも当たり前、根子月の席である俺の隣は、未だ空席だから。

「おーい、根子月 好男ー!また遅刻かー?」

担任は、半ば笑いながら再度点呼を行う。
すると、廊下の方から暴走音が聴こえてくる。
その音は、段々と我が教室に近付いてきて、引戸をぶち破る音と共に入ってきた。

「ッ………セェェェェェェェフゥッ!先生!根子月、ギリギリセーフで只今参上!」
「アウト」
「嘘ー!?ちょっと待って、先生!俺は毎朝恒例の猫美ちゃんへのいってきますのチューすら涙を飲んで我慢して走ってきたのに!?」
「………仕方ないな、セーフにしてやるから扉をはめ直して早く座ってくれ」
「よっしゃー!愛してるぜ、先生!猫美ちゃんの次に!」

そんな根子月の登場で教室は再び喧騒に包まれて、担任も苦笑している。
その元凶は、実に爽やかな笑顔で座った。

「よぉ、八尾っち!おはようさん、今日も良い一日になりそうだな!」
「…相変わらず元気だな、ヨッシー」

爽やかな根子月に呆れつつ、笑って返す。
最後の点呼に俺が答えて、朝のホームルームは幕を閉じた。




「しかし、今日はやけに暗いな。八尾っち、何かあったの?」
「…そう見えるか?」

俺は、朝の出来事を簡潔に話す。

「あぁ、成る程。半年前、八尾っちと委員長が良く喋るのを周囲が恋人同士だって勘違いして、それが委員長に惚れてた不良の耳に入って、その不良が仲間数十人集めて八尾っちをリンチしようとしたら、逆に病院送りにされたって話を思い出したから、そんなブルーな訳…」
「丁寧な説明、どうもありがとう。つまり、そういうことだ」

そう、根子月の言った通りである。
これこそが、俺の留年した理由。
今でも病院送りにした連中は、意識不明の重体か、錯乱状態で精神病院に入院しているかの二択らしい。

「しかし、あの時の八尾っち…すごかったな。一瞬で奴らを倒しちまうんだからさ」
「…自分でも不思議だよ、気がついたら目の前で不良ども…と、委員長…が倒れてるんだから」

…また一つ、嘘をついた。
本当は全部覚えているくせに。

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10/19(Wed) 17:53
節制ちゃん

―半年前―



「…こんなところに呼び出すなんて…委員長は何を考えているんだ?」

夕刻、日が沈みかけて周りが薄暗くなってきた頃。
俺は、下駄箱に入っていた委員長からの手紙で、校舎の敷地内にある小さなお社の前に呼び出された。

「…にしても遅いな…かれこれ三十分は待っているはずだが…」

流石に暇になるわけで、俺はお社に祈りを捧げてみたり。
一応、ここには狐を祀っているらしいので。

『…待ち人が早く現れますように…っと、あと、欲しい狐グッズが手に入りますように…出来れば後者を優先的にぃ…』

なんて、なんとも図々しいお願いをしてみると、お狐様に通じたのか、それが叶ってしまう。

「よぉ、八尾 縁。まさかとは思ったが、噂は本当だったんだな」

叶ったのは前者だけど…ちょっと残念。
聞き覚えのある声が耳に入り、振り返る。
そこには、同じクラスの問題児・嵐山が。

「…ふぅん、呼び出しはお前の仕業か。通りで変だと思った」
「へっ。噂の事は否定しねぇんだな、八尾」
「…噂?」
「お前が水原と付き合ってるって事だ!知らねぇとは言わせねぇぞ!?」

目を血走らせ、怒りを露にする嵐山。
はて…何の事やら。

「…水原って誰?」
「はぁ!?オレをバカにしてんのか、テメェ!?同じクラスのクラス委員長、水原 菜美だよ!」
「あぁ、委員長ね」

成る程、委員長の話ってなら納得だ。
確かに…俺と彼女が恋人同士だって噂が流れてるってヨッシーが言ってたし。
嵐山がしつこく付きまとってくる、と委員長から愚痴を聞いたことあるし。
つまり、これは…。

「嵐山、お前の勘違いだろ」
「勘違いねぇ…ふん、どうだかな。オイ!お前ら、出番だっ!!」

嵐山の号令で、影の方に隠れていた仲間らしき奴らが出てきて、あっという間に俺を囲む。
…成る程、リンチって訳か。面倒くさいな…。

「へぇ…集めたもんだね」
「ふふふ、余裕ぶっていられるのも今の内だ!お前ら、やっちまえ!!」

その声と共に殴りかかってきた二名の不良くんの攻撃を軽くかわし、反撃に蹴りをくれてやる。

「!?」
「ぐへっ!?」

哀れにも蹴りを貰った男二人は、呻き声を上げて地面に崩れ落ちた。
驚き、絶句する嵐山に一言申す。

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