クロック オルゴール

□クロック オルゴール 0
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  始まりは、宝の地図が飛んでくる



新しいクラス、新しい先生、新しい教室。
春休み中楽しみにしていたクラス替えが終わった。
教室の場所は去年と変わらず、先生は悪くなった。
クラス替えをする日は必ず、朝はワクワクしながら学校へ行き、帰りは少し落ち込んで帰ってくる。
1番良かったのは3年前だなあ、と夏海は新しい席に座って考えていた。
2年生初のホームルームで、担任の若島が話す今年の目標や、雑談なんかを適当に聞き流し、夏海は手紙を書いていた。

[ほのちゃんへ
私はまたA組です
今日も一緒に帰ろうね☆
良いものを持ってきたから!
いつもの所で待ってるヨ
                なつみ]    
手紙を書き終わったところで、ちょうど下校時刻になった。
鐘がなり、一斉に教室を出る。
下駄箱まで行き、帆風ほのかの靴箱に手紙を入れ、外に出た。
そのまま中庭に向かう。
中庭にはたくさんの果物の木が生い茂っている。
夏海と帆風は、ここを“秘密の果樹園“と呼んでいる。
この中庭は何故かほとんどの生徒が知らない場所なのだった。
かりんの木に寄りかかって本をよんでいると、2〜3分で帆風はやってきた。
「お待たせ!早く良いもの見せて!」
帆風が急かす。
「はいはい、そんなに慌てないでよ」
そう言いながら夏海は制服のポケットから小さな封筒を取り出す。
「これね、朝ポストに入ってたの。」
「きれいだけど、この封筒小ちゃいね」
帆風の言う通り、手のひらの半分程の大きさしかなかった。
しかし、金箔できれいな模様が描かれている。
「けど、中身はね…」
夏海は封筒を帆風に渡す。
帆風が取り出したそれは、なんと1枚のちらしだった。
《あなたもチャレンジ!アンダーローズの楽者になれる鍵を手に入れよう!》
チャイムが鳴った。2人は荷物をひっつかみ、慌てて学校を出る。
いつもの帰り道を、いつもとは違う話題で盛り上がりながら歩く。
「これ、どう言う意味なんだろう?」
帆風が首をかしげる。
「そうなの。アンダーローズの楽者って何?」
「チャレンジ…」
そこで、夏海が言った。
「ふふふ…!そ、こ、で、!実際に確かめてみようと思うの。」
「と、言うと?」
「ほら、ここにあるでしょ。オルゴール店とけい屋って。行ってみよう!」
2人はさっそく駆け出した。
ちらしの地図通り10分程進んだところは、人通りの多い道を、1本曲がった細道の奥だった。
看板を確かめる。
「ここだね…」
「うん、意外と近いね。」
大きく深呼吸し、夏海は扉に手をかけた。
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