「暇です」
突然部屋にやって来て、突然言われたその言葉。
あんまり唐突に言うものだから、私は食べかけのアイスをもう少しで落としてしまうところだった。
「アマイモン、フェレス卿に礼儀って教えてもらわなかったの?」
「礼儀、ですか?」
人の部屋に入るときはノックをする。
入ってきたらまず挨拶。
せめてこの二点だけでもしてもらいたい。
彼の登場はいつも心臓に悪すぎる。
先日は、何か液体が降ってきたと上を向くと、私の食べていたチョコを狙いながら天井に張り付いていた。
そのせいでホラー映画の女優張りに叫んでしまい、燐や雪男を心配させてしまったのだ。
そうそう、私はあちらの綺麗な女子寮が性に合わず、あまり似ていない双子と一緒におんぼろ旧男子寮に住んでいる。
「ウーン、言われたような気もしますが、興味がないことは大抵忘れます」
「フェレス卿に激しく同情」
全くなんて子だ。
興味がないことは大抵忘れます?
じゃあ君に興味があることとは一体何だね?
「えーっと、お菓子と奥村 燐と、それから君ですね」
「え、何で私?」
「ボクが君のことが好きだからです」
全くなんて子だ。
多分好きの意味はイマイチ分かっていないだろうが、そんな風に言われたら。
あぁ、もう勘違いしちゃうじゃない!
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