短編
□煩悩
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「メフィスト…。キスがしたい」
「もうすぐで除夜の鐘が鳴り終わるというのに、何煩悩を垂れ流しているんですか」
「鐘の音で煩悩祓えりゃあ、犯罪なんざ生まれないよ」
「詩音さん、口が悪いですよ」
「私は事実を述べたまでさー」
「酔ってらっしゃるんですか?」
「酔ってない。まだ酒飲んでないし」
「まだ以前に、貴女は未成年ですからね。一応私は教職員なので、未成年の飲酒は見過ごせませんよ」
「はいはい。飲まないって」
「まったく」
「今何個目?」
「はい?何がです?」
「除夜の鐘。今、何個撞いた?」
「確か97個目ですね」
「うっわ、律儀に数えてるとか」
「貴女が訊いたんでしょう…!」
「ごめん、ごめん。…でもさぁ、やっぱこんなんで煩悩が祓えるとは思えないなぁ」
「否定はしません」
「だってキスしたいし」
「けれどそう大っぴらに口にするのは止めましょうね?」
「メフィストはしたくないの?」
「キスですか?」
「うん」
「いつでも詩音さんと出来るので、別に今でなくてもいいです」
「じゃあさ、私がしてって言ったら?」
「もちろん。可愛い恋人からのおねだりを、無下に断るなんて紳士じゃありませんよ」
「じゃあしてよ。キス」
「仰せのままに」
煩悩
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