短編
□きっとハッピーエンド
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「メフィスト、待っててね」
彼女は笑った。
一体何を待つのかと訊けば、
「貴方と永遠に生きられる方法を見つけるまで」
この間の言葉はただの戯れ言ではなかったのですね。
先日言われた言葉を思い出した。
貴方と永遠に生きてみせるから。
いつものじゃれ合いの言葉だと、信じて疑わなかったのに。
そこまで貴女を突き動かすものは何ですか?私には皆目見当がつきません。
「淋しそうだったから」
ただ一言そう答えた。
それから暫くして、彼女は姿を消した。
仕事の合間に行方を探してみたが、彼女の痕跡を見つけることは叶わなかった。もしかすると死んでしまったのかもしれないと、いつしか彼女を探さなくなった。
それと同時に、彼女の言葉も忘れていった。
「お待たせ」
ある日突然、私は言葉を思い出した。それはまさに青天の霹靂。
探さなくなって数十年経つというのに、彼女は以前と同じ姿をしていた。一体どういうことなのかと問い詰めれば、
「私も悪魔になったの」
そう言って笑った笑顔は、彼女がまだ人だった時のものと何一つ変わっていない。本当に悪魔になってしまったのかと疑うほど。
「私は元々欲とかない方だったから、思っていたより時間が掛かったの」
それを聞いて、もう後戻りは出来ないのだと悟った。
彼女は"悪魔憑き"でも"悪魔堕ち"でもなく、"悪魔"そのものになってしまった。彼女の魂は虚無界にある。もとの純潔なものには戻せない。
「ずっと一緒にいてね。ずっと一緒にいてあげるから」
それを知ってか知らずか、無邪気に笑う彼女に心から惹かれた。
きっとハッピーエンド
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