短編
□どこかで聞いたような話
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殺して、と言われたから殺した。
シオンの胸にボクの鋭い爪を立てて、次の瞬間には彼女の体から力が抜けたのを見た。
「また、ダメでした」
ポツリと彼女の体を抱き締めて呟いた。
ボクはこれで何度彼女を殺したんだろう。
シオンの脱け殻の埋められた墓標に腰掛け、ぼんやり空を眺める。
太陽が昇り、その真っ赤な星が沈んだかと思うと、次はひんやり冷たそうな月が昇る。それを何度も繰り返して、目を閉じれば季節が目まぐるしく変わっていった。こうしてボクは百の巡りを数える。
人の命は短い。けれどその魂は何度も転生を繰り返し、そして疲弊しきるとどこかボクの知らない所へと消えるのだ。
シオンも例外でなく。つい先程殺した彼女も何度目かの転生だった。
初めて会った時の面影をもう残してはいないが、それでも惹かれるのはきっと彼女の魂そのものに恋をしているから。例えどれだけ離れた所で転生しても、必ず見つけられる自信があった。
こうしている内にも、気が狂ったように空は色を変え、季節を変え、ボクはそれをただ眺める。
「アマイモン」
誰かに呼ばれたような気がして振り返ると、一輪の百合が風に凪いでいた。朝露に白い花弁が濡れていて、ボクはそれにひとつキスを落とした。顔を離す拍子に思わず遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。
「百年はもう来ていたんですね」
この時初めて気がついた。
どこかで聞いたようなお話
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