短編
□ひゃっほう!
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「好きです」
「ボクは嫌いです」
心の底から嫌そうな顔をして、彼は私を振り返った。
「どうしてボクに付きまとうんです。殺しますよ」
どうして?どうしてって、貴方のことが好きだから。
一目見た時から、私は貴方の虜になっているんだから。
「好きです。貴方のことが」
「冗談は止めてください。本当に殺したくなる」
「冗談なんかじゃないです」
「殺したら兄上にボクが怒られます。だからボクを苛つかせる君の存在は、ボクにとって迷惑以外の何物でもないことぐらい、そろそろ気付いてもらえませんか?」
そう言って彼は、口に含んでいたあめ玉をバリバリと噛み砕く。
私は別に殺されたって構わない。だって好きな人に殺されるなんて、素敵じゃない!!
「私は殺されたいです」
そう言うと、彼は怪訝そうに顔をしかめた。
「…君みたいな人間、本当に嫌いです」
低く、唸るような声色で彼が言った。
それでも、私は好きなんです、と食い下がると、彼は一つ溜め息を吐き、それから私に向かってこう言った。
「じゃあ、死んできてください。そうすれば君の魂を食べてあげます」
なにそれ素敵!
身体は一つにはなれないけれど、本当の意味で心が一つになるのね!
貴方と一つになれるなら、こんな身体なんて惜しくない。
見ててください。今から私は貴方と一つになるための階段を昇ります。
「…君は馬鹿な人間ですね。でも約束は約束です。この魂はちゃんと食べてあげますよ」
私は心から歓喜の声をあげた。
ひゃっほう!
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