短編
□あいされたい
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わたし は とく に あい というもの に うえていました。
まるで のど の かわき を うるおす みず の ように わたし は もとめました。
これさえ あれば わたし は かんせい する き が して。
ふかんぜん な わたし は わたし を みとめてくれる という あい を ひどく もとめました。
きっと ふかんぜん な わたし だから だれも わたし を あいして くれない んでしょう。
みぎて は くさり に つながれて。
ひだりて は くう を かいて。
みぎめ は ひかり を のぞみ。
ひだりめ は やみ を のぞき。
みぎあし は たつ こと を やめ。
ひだりあし は たつ こと が できず。
たった ひとつ の くちびる から は あいしてください の ことば を こぼし つづけます。
「いいですよ。愛してあげます」
とつぜん ひだりみみ に とびこんだ あまい おと。
あなた が わたし みたいな ふかんぜん な そんざい でも あいしてくれる という かみさま ですか?
「いいえ、違います。けれど貴女がそれを望むなら、ボクは貴女だけの神になってあげますよ」
わたし だけ の かみさま?
すてき です。
わたし は これで かんせい できますか。
「なれるんじゃないですか。貴女はもともとが人間ですし」
うれしい です。
かみさま が そう いう なら きっと そう なんです から。
わたし は やっと もとめて やまなかった あい を て に いれました。
みぎて は かいほう され。
ひだりて は かみさま に ひかれ て。
みぎめ は ひかり を みつめ。
ひだりめ は やみ から のがれ。
みぎあし は もういちど たち あがり。
ひだりあし は だいち に ふれ。
わたし は やっと かんせい しました。
これで みんな わたし を ばけもの とは よばない でしょう。
これで みんな わたし を あいしてくれる でしょう。
これで わたし は ひとりぼっち じゃない。
「ハイ。いつもボクが一緒にいてあげます」
かみさま。
かみさま。
かみさま わたし は あなたを あいしています。
だから みすてないで ください。
あいされたい
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