短編
□私は、変態です!!
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「メフィストさん」
「はい、何ですか?詩音さん」
「タイツ、破らせてください」
「…………………、はい?」
どうやら、私の耳は腐ってしまったようですね。有り得ない幻聴を聞いてしまいました。して、詩音さんは何と言ったんでしょうか?
って、ちょっと!貴女、何やってるんです!?女性が男性のそんなとこに触るんじゃありません!こらこら、止めなさい!
「え?だって今、メフィストさん"はい"って言ったじゃないですか」
「その後にあった"?"は無視ですか」
「てへ☆」
ただいま言葉だけでお送りしておりますが、実は私のタイツに爪を立てる詩音さんと地味な格闘を繰り広げているんです。
私も一応男ですし、力にはそれなりに自信があるんですが(単純な腕力ではアマイモンの方が上でしょうけれど)、詩音さんも案外力が強く、まさに互角の死闘と言うわけなのです。どうやら、残念なことに私の耳は正常だったようです。すみませんが、誰か助けてください。
「タイツ、タイツ、タイツ、」
詩音さんが何か呟き始めました。正直すごく怖いです。何が怖いって、目が据わっているんですよ。いやもう本当、悪魔も泣き出すくらい怖いんです。
あ、私の名誉のためにも言っておきますが、泣き出しそうなのは私じゃないですよ。本当ですよ。
「"はい"って言いましたよね?」
「否定はしませんが、意味が違うことを主張します」
「意味なんてこの際問題じゃないです」
ならば、貴女は一体何を問題だと言うんですか。まさかとは思いますが、私が"はい"と言いながら抵抗していることですか?
「解っているんでしたら早く破らせてください」
「くっ、これは私のお気に入りなんです!」
「なら一秒あげますから着替えてください。いつもそれ位で着替えていますよね?」
貴女、とんだ悪魔ですね☆
傍から見ても、私から見ても馬鹿らしい攻防をしながら言いますと、詩音さんは一度きょとんとして(けれど力は緩めずに)、私の顔を見ました。それから、違いますよ、私は悪魔じゃありません。と言った。
「じゃあ何だと言うんです」
すると彼女は、今までで一番の笑顔を浮かべました。もう多分一生忘れられないでしょう。
そして彼女はそんな記憶に強く焼き付くような笑顔で、そして誇らしげに言いました。
私は、変態です!!
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