短編
□ぐさり。
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詩音が死んだと、兄上から聞いた。
質の悪い冗談かと思ったが、兄上はやはりどこか哀しげな顔をしていて、あぁ、本当なのかと納得した。
納得はしたが、理解は出来なかった。
ボクの隣は彼女の定位置。なのに、そこにはもう二度と彼女が立つことはない。
どうして彼女は隣にいないのだろう。
どうして彼女は死んだのだろう。
どうして、だって彼女は、確かに特別な存在だったじゃないか。
兄上に尋ねると、兄上は一言静かにおっしゃられた。
「ヒトは脆い」
まるで、胸につっかえていたものがストンと落ちたようだった。
彼女は特別である前に、ただの"人間"だった。
人間が脆弱な存在であることなんて、ボク自身よく知っていたのに。何故ボクは、彼女だけは大丈夫、と約束されていない絶対を信じていたのか。
気付いた時には
君はもう何処にもいなくて
愚かなボクに
鋭利な刃を突き立てました
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