短編

□ぐさり。
1ページ/1ページ






詩音が死んだと、兄上から聞いた。


質の悪い冗談かと思ったが、兄上はやはりどこか哀しげな顔をしていて、あぁ、本当なのかと納得した。


納得はしたが、理解は出来なかった。


ボクの隣は彼女の定位置。なのに、そこにはもう二度と彼女が立つことはない。


どうして彼女は隣にいないのだろう。


どうして彼女は死んだのだろう。


どうして、だって彼女は、確かに特別な存在だったじゃないか。


兄上に尋ねると、兄上は一言静かにおっしゃられた。




「ヒトは脆い」




まるで、胸につっかえていたものがストンと落ちたようだった。


彼女は特別である前に、ただの"人間"だった。


人間が脆弱な存在であることなんて、ボク自身よく知っていたのに。何故ボクは、彼女だけは大丈夫、と約束されていない絶対を信じていたのか。





気付いた時には
君はもう何処にもいなくて

愚かなボクに
鋭利な刃を突き立てました





</>

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ