長編

□空がぐるりと回って。それから黒に。
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「貴女、死にたいんですか?」



ゆらゆらとする思考を、現に引き戻すように掛けられた言葉。

聞いたことのあるフレーズだ。

ぼんやりとしていた意識が、徐々に覚醒し出す。と同時に、身体中のあちこちが燃えるように熱いのが分かった。

私、何してたんだっけ。

気管をギリギリと締め上げるそれに、全く力の入っていない手を添えながら考えた。爪先がブラブラと本来の役目を求めて揺れる。

少し目を下に向けると、おかしな髪型の男が無表情に私を見上げていた。

あ、そうだ。

こいつ、地の王アマイモンだ。

尖った耳と鋭い牙。それから前に見たことのある髪型で記憶を辿り、結論を下す。

突然現れ、"遊び"と称して襲われたことを思い出した。

抵抗もなくされるがままに痛め付けられ、このままあいつの所に行けたら良いのに、とそんなことをぼんやり思っていると、急に体が真横に投げ出された。



「う、」



背中を強かに打ち付け、衝撃で口から呻き声と肺の中の空気が零れる。ついでに頭もぶつけたのか、視界がぐるぐると回って気持ち悪い。

熱い。

ズキズキというよりは、ジリジリと焼けるような痛み。呼吸が苦しい。

目の端に映った空は、すっかり暗くなっていた。きらきらと瞬く星が、今日はやけに高いような気がする。



「ボク、無視されるのあまり好きじゃないんです」



抑揚のない声が落ちてきた。

少し離れた所から、アマイモンがこちらに向かって歩いてくる。こつん、こつん、と彼のブーツの踵が奏でる音が辺りに響いた。

どうやら、先程の彼の質問に答えなかったために投げ飛ばされたらしい。

いまだにくらくらする頭で、状況を確認。

どうするべきだろう。

逃げるべきなんだろうか。

そう考えておきながら、私の体は逃げることを放棄したように、ダラリと地面に寝そべっている。ひんやりとしたコンクリートと、絶え間なく吹いている風が、熱を帯びた体に気持ちいい。



「し、ろう…」



もういなくなってしまったあいつの名前を呟いた。



「いえ、違います。ボクの名前はアマイモンです」



落ちてきた言葉と、綺麗な星空を最後に、私の意識は完全に思考の底に沈んでしまった。




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