長編
□始まる。そう言うには空は冷たすぎた。
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以前私に、死にたいのか、と聞いてきた奴がいた。
強くて、優しくて、面白い奴だった。
私の大嫌いな祓魔師だったけど、そいつは不思議と嫌いじゃなかった。
あいつは私の、初めての友人だった。
けれど、奴は死んだ。
己の息子を守って死んだのだと、風の噂で聞いた。
また、私は独りぼっちになった。
独りには慣れていたのに、あいつがいた頃の温もりが忘れられなくて、心と言うものにぽっかり穴が開いた気分だった。
一人で見上げる夜空は、酷く冷たいことを思い出した。
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