ショート・ショート・ショート
□1〜慎之介〜
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「あのバラ、ですか?」
メインセットの後ろにあるトークセットには、白を中心に、春らしくアレンジされた花束が生けられていた。
ウェディングブーケのようなカンジで、実はセットに入った時から、いいなと思っていたものだった。
でも、どう見ても私のイメージだとは思えず、からかっているわけではないようだけど・・・慎之介さんの目を見て理由を探ろうとした。
「真っ白で汚れてなくて、凛として、清々しくて、回りのグリーンが一層その麗らかなカンジを出して・・・まさに、莉桜ちゃんにピッタリやん」
慎之介さんは、満面の笑みでそう言ってくれた。
「ありがとう」
嬉しい筈なのに、何故か素直に喜べない。
慎之介さんが励ましてくれようとしてくれるのが分かるから、もっと自然に笑いたいのに、ぎこちなく微笑むのがやっとだった。
「白、嫌いなん?」
「そんなことないですけど・・・私、真っ白じゃないですよ?」
ハナエさんとのこと、嫉妬したりして。
自分の気持ちが分かってもまだ、ハナエさんにも慎之介さんにも変な態度とっちゃうし。
心の中で言ってることが、そのまま言えたら楽なのに。
「えっ」
慎之介さんの大きな掌が、私の頭をポンポンとしている。
「せやったら、ピンクは?」
「ピンク?」
何故ピンクなのか分からず、私はきょとんとしてしまった。