ふーまの部屋
□君にHITOMEBORE
2ページ/4ページ
「入らないの?」
背中越しに声をかけた。
「あ・・・」
振り向いた彼女の顔は、ハッキリ言ってどストライクで、まるで時間が止まったかのように大きな瞳に吸い込まれていた。
「あの・・・すみません」
俺が、退いて欲しくて声を掛けたと思ったのか、彼女は脇にそっと避けた。
「あ・・・いや、そういう意味じゃなくて・・・君も特進なんでしょ?」
俺は自分の制服にも付いているバッジを指さした。
「新入生でしょ?まだ入ったことない?」
「いえ、あの・・・私・・・」
「大丈夫。取って食われたりしないから。行こうよ?」
断りきれないと思った彼女は、ちょっと困った顔をして俺の後に続いた。
「ね?別になんとも」
振り返った瞬間、次の言葉が出てこなかった。
彼女の視線は、ただ一人だけを見つめていた。
少し潤んだ瞳に、明らかにさっきよりも上気した頬、一目見て恋してるんだと分かった。
急に喉が乾燥して咳払いをすると、視線の先の人物が顔を上げた。
俺を通り越したその目線は、彼女に柔らかく微笑んでいる。
それに応えるかのように、彼女も微笑んで軽く会釈をした。
耳まで赤くなりそうな、それでいて凄く嬉しそうな顔。