ふーまの部屋
□君にHITOMEBORE
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好きな人には、好きな人がいる。
振り向いて貰えない切ない顔を見ていると、無理矢理奪いたくなる。
手を伸ばせば抱きしめられる。
だけど・・・そんなことはしない。
だって手を伸ばしても届かない、こころが。
初めて彼女を見たのは、学校の図書室だった。
いつも読んでいる雑誌を買いそびれて、それを見る為に入学して2年めにして2度目の図書室。
目当ての雑誌を手にし席に着いて、ふと前を見た。
新入生かな?
制服をキチっと着こなした女の子が、奥の扉をじっと見つめていた。
この図書室にも自習スペースは十分にあるけど、その奥にはパスを持った特進コースの学生だけが入れる自習スペースがある。
パスと言うか、正確に言うと、特進の学生は予め学生証にICチップが埋め込まれていて、SUICAみたいにゲートを開けて奥に進めるようになっている。
俺も一応、パスは持っている・・・使ったことはないけど。
1度目に来た時は仕組みを説明され、何人かの生徒が実際に通ったりするのを見ただけだったから。
入ってみたいのかな?
顔は影になってハッキリ見えないのに、なんかオーラのある彼女に釘付けになっていた。
制服に特進のバッジが付いている。
一人じゃ不安とか?まだ使い方が分からない?
顔を見てみたいという好奇心と、困ってるなら助けてあげたいという親切心と、男ならではの漠然とした下心と・・・気付いたら、俺は席を立っていた。