ショート・ショート・ショート
□1〜慎之介〜
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セットチェンジの間、私は邪魔にならないようにソファに座ったまま、花瓶に生けられた真っ赤なバラを見ていた。
「お似合いだな・・・」
華やかで堂々としたその姿は、まるで慎之介さんとハナエさんのよう・・・やっぱり、あの二人お似合いだな、そう思うと悲しくなってしまう。
「・・ちゃん。おーい、莉桜ちゃーん」
目の前でチラチラと動く手に気づくと同時に、誰かが私の顔を覗き込んでいた。
「あ・・・慎之介さん」
「あっ、ってぇ。莉桜ちゃん、マジで気づかなかったん?」
「あ、えっと・・・」
「ま、ええわ。で?何がお似合いなん?」
「聞いてたんですか?」
「聞いてたっちゅうか、莉桜ちゃんが花見ながらブツブツ言うてはるから、気になってな」
私、そんなにブツブツ言ってたんだ?
「で?」
慎之介さんは、聞くまで動かないとでも言うように、私の横にピッタリ座って離れそうにない。
でも・・・だからと言って、彼にハナエさんのことを言うわけにもいかず・・・
「・・・あの花・・慎之介さんみたいだなと思って。華がある慎之介さんにお似合いだなと思って見てたんです」
慎之介さんは納得がいっていない顔で私を見たけど、それ以上は聞いてこなかった。
半分は本当のことだもん、私もそれ以上は何も言えず俯いていた。
「ほな、あっちの花が莉桜ちゃんやね」
そう言うと、慎之介さんは奥のセットの花を指差した。