悪ノ物語

□―第四章―
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僕の去年の誕生日に、ピコ様が買ってくれた、愛馬のイノベータに乗馬しながら、もう一時間はたっただろうか…

やっと。
やっと戻って来た。
この王宮に。

真っ先にリンに会いたい。
その気持ちを抑えて、僕は、お父様とお母様が待っていらっしゃる、談話室へと向かった。


コンコンコン


「失礼します。」


ドアを三回ノックし、室内へ入った。

そこには、昔と変わっていないお父様とお母様の姿があった。


「レン!! お帰りなさい。」
「お帰り、レン。」
「ただいま帰りました、陛下、王妃。」


これからは、陛下、王妃と呼ばなきゃいけない。
最後くらい、お父様、お母様と呼びたかった。

けど僕には、使命がある。

リンを守るという、使命がある。

その為なら僕は、悪にだってなってやる…!!


「…レン。 分かっていますね? あなたにはこれから、リンの召使になります。 つまり、王子ではなくなります。」
「分かっています。 僕にしか、出来ない事なんですよね?」
「えぇ。」
「…精一杯、リン様に使えさせて頂きます。」
「…あなたには、最後まで苦労させてばかりね…。」
「苦労だなんて思ってません、むしろ感謝しているんです。 リンに再会させてくれて。 ありがとうございます、お二方。」
「レン…」
「レン、リンを…この国を頼んだぞ。」
「はい、陛下。」
「うん。 じゃあ、下がっていいぞ。 …リンは今、自室に居る。 行ってあげてくれ。」
「はい!!」


陛下と王妃は、悲しそうな表情をしていた。

何か、あったのだろうか…
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