novel2
□It's the special day.
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10月4日、朝。
心地よい疲労感のなか、いつもより少しだけ早く目が覚めた。
いくつになっても自分の誕生日の朝というのは特別なものだ。
カーテンの隙間から見える外はまだ薄暗い。
隣に感じる温もりに目を遣ると、昨夜から自分の誕生日を祝ってくれている、特別な人。
忍足の安らかな寝顔。
規則正しい寝息と心音が聴こえる。
生まれたままの姿で温かく抱き込まれて、気恥ずかしいが幸せな朝だ。
静かに幸福感に浸っていると、目の前の瞼がゆっくりと開き、黒い瞳に映し出された自分が目に入った。
おはよ、とすっかり習慣になった挨拶とキスを交わした後、
「…お誕生日、おめでとうさん」
柔らかい笑みで優しく囁かれて、不覚にも胸がいっぱいになる。
ありがとう、の代わりにもう一度ゆっくりとキスをした。
そんな幸せな1日の始まり。
end.