novel2

□振り下ろす銀の剣のように
1ページ/4ページ

都内某高級ホテル。

多忙を極める跡部財閥の後継者である跡部と、同じく多忙な有名レストランのシェフである忍足がよく逢瀬に利用するスイートルームである。

明日の仕込みを終えた忍足がカードキーを開け広々としたリビングを抜け寝室へ向かうと、先に仕事を終えた跡部がシャワーを済ませた黒いバスローブ姿で、豪奢なキングサイズのベッドに横たわっていた。

「お疲れ」
「ああ…跡部もお疲れさん。ちょおシャワー浴びてくるな」

荷物を置き早々とバスルームへ向かおうとする忍足に、不意に跡部が引き留めの言葉を投げかけた。

「別にそのままでも構わねえ。…お前の匂い、嫌いじゃねえしな」
「…えらい殺し文句やね。誘っとるん?」

跡部の冗談かとも思ったが、大きくはだけた黒いバスローブから覗く白い胸元やスラリと伸びた脚が、目の毒である程に色香を放っている。

「見りゃわかるだろ」
「…何やこの据え膳。逆に怖いわ」
「バーカ。下ごしらえしてベッドで待っとけっつったのはてめえだろうが」
「せやけど…まあええわ。ありがたくいただきます」

これ以上言わせて気が変わっては困る、とばかりに忍足は跡部の上に覆いかぶさって唇を塞いだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ