novel
□哀しいくらい誰より愛しいことを知った
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「オイ忍足、もう帰るぞ…ってなんだ寝てやがるのか、アーン?」
部活も終わりいつもの部誌を書き終えた跡部が、待っているはずの恋人に目を遣ると。
部室のソファに凭れて、疲れているのかすやすやと寝息をたてている忍足。
(待たせ過ぎたか…)
幸せそうにうたた寝する氷帝の天才の寝顔を見つめながら、ひとりごちた。
直ぐに起こそうとするが、気持ち良さそうに寝ているのを起こすのも憚られ、中々こんな機会もないので面白半分にしばらくそっとしておくことにした。
「おい、眼鏡掛けたまま寝るなよ…、意外に睫毛長えな。おいおい口開いてるぜ?」
楽しそうに観察をする跡部。
しばらくそうしていると、ふと相手の乾燥した唇が目に入り、気になってくる。
「チッ、しょうがねえな…」
ズボンのポケットから高級そうなリップクリームを取り出し、キャップを外して忍足の唇に塗ろうとした。
しかし跡部は人に塗ってあげることには慣れておらず、悪戦苦闘していた。
「チッ、めんどくせえな…よし」
どうやら良い案を思いついたらしい跡部は、おもむろに自分にリップクリームを塗り忍足へと口づけた。