【短編集】

□追いかけっこ
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太い幹の上で銀髪の男が寝そべりながら
如何わしい本を片手に持ち読みふけっていた。


葉の隙間を吹き抜ける風が本のページを勝手に捲ると
グローブから伸びる節の長い奇麗な指が
その本をパタンッと閉じる。


(ふあぁ〜気持良い風だな・・・特に異常も感じられないし
少〜しくらい居眠りしても、ま、誰にも咎められないでしょ♪)


そう一人ごちて目の端では川岸で騒ぐ
金糸の姿を確認するとカカシはウトウトと船を漕ぎだした。





−−−−−−−−−−−−−−−





「おーーーいナルト
こっちだこっち!その網こっち持ってこいよ!」


大きな声でキバがナルトを呼ぶと
隣に居たシカマルがキバの尻に軽い蹴りを入れた。


「いてぇー何だよシカマル、人のケツ蹴りやがって!」


「馬鹿かお前・・・そんな大きい声だしたら
魚が勘付いて逃げるだろ」


「あっ・・・」


時既に遅し、さっき確認出来た
川の中の魚の姿はもう見当たらなかった。


「やっちまった・・・」


そう言って肩を落とすキバの元に
網を持ったナルトが駆け付けた


「キバ魚見つけたのか!」


短いツインテールを揺らして走ってきたナルトは
肩を少しだけ上下させている。


「もういねぇ・・」


「えっ?いない?」


「今、お前が大きい声出したから逃げちまったんだ!」


「えぇーーーーーそうなのか?ごめっ俺ってば・・」


キバと同じ様に、ナルトがガクリと肩を落とし
申し訳ないとキバとシカマルに謝る。


キバの尻に本日2発目のシカマルの蹴りが入る


「いってーーーおい今の2発目は結構痛かったぞ!」


「何ナルトのせいにしてんだよ、魚逃がしたのお前だろが」


「・・・」


キバとシカマルのやり取りに
ナルトは「えっ?何?俺のせいじゃないの?」
と、シカマルとキバの顔を交互に見ている


「さっき、キバがナルトを大声で呼んだだろ?
あれで、魚が勘付いて逃げちまったんだよ。」



「ほへっ?そうなのか?・・って何で俺のせいにしてんだよキバ!」


形勢逆転、今度はナルトがキバを責め出した。


「くっそーーーシカマルお前言うなよ!」


「俺はいつでも、ナルトの見方だ」


さらり臭いセリフを吐いたシカマルに
キバの眉間に皺が1本入る


「お、俺だってナルトの味方・・だぜ・・」


「お前は、都合のいい時だけ味方で
都合が悪いとナルトを見捨てるじゃねーか」


「はーーーーー?いつ俺がナルトを見捨てたよ?
何月何日何時何分ですか?」


随分子供じみた事を言うキバである。
しかし、シカマルは口を開くとスラスラと言葉を紡ぎだす


「5月2日14時37分山田さん家の畑に出来た
トマトが旨そうだから、くすねようと言ったお前に
賛同して畑に入ったら、畑の手入れに来ていた
山田さんに見つかって、急いで逃げようとしたら
土のぬかるみにはまったナルトを置いて
1人一番先に逃げたのはキバだ。

何か間違いがあるのなら訂正してみろ。」


鋭い三白眼に軽く睨まれて


「・・・・ま、間違いないです。」


バツの悪い顔をするキバ


そんな2人のやりとりを見ていたナルトが
あはははは、と大きな声を上げ
腹を抱えて笑いだした。



「ナルト笑ってんじゃねーーよ!」


「いやだってさ、あの時一番に逃げだしたくせに
すぐ戻ってきてさ『俺が取ろうって言ったんです、だから怒るなら俺だけにして下さい!』
って、必死の形相で言っててさ、思い出したら面白くって♪」


「結局、素直にお前が謝ったから、怒られなかったけどな」


シカマルが、くくっと笑う


「///んっだよ、逃げたけど戻ってきたんだからいいだろ!」



「「お前って、キバって・・・結構いい奴だよな、だってばよ♪」」


「////っ」


真っ赤な顔のキバに
ナルトとシカマルが、腹を抱えて大声で笑っていると
誰かの腹がぐぅ〜と鳴った



元々この川で昼飯にと魚を取る予定だったのだが
こんな調子なので魚は全くとれない



「・・・追い込み漁でもしてみるか?」


頭脳派のシカマルが、騒がしいのが居る事だし
大声を出して捕まえる良案を出すと
ナルトとキバは、やろうやろうと楽しそうに
シカマルが考えだしたその良案に乗っかる。


そして、靴を脱ぎ裾をまくって
少しだけ冷たい川に足を入れる


「っまだ川の水つめてぇな・・・」
「あ?そうか結構気持ちいいぜ♪」
そんなやり取りをするキバとシカマルとは正反対の下流で
ナルトは、ぎゃぁああつめてぇええと、独り大騒ぎである。


追い込み漁の役割分担は、ナルトはが網を持ち待機
キバとシカマルは魚を追い込むハンターだ。


「よし、ここからゆっくりナルトの所まで声を出しながら歩いて」


シカマルがまだ説明しているのに既に動きだすキバ


「だらぁあ!行くぞナルトぉ!」


「おい最後まで聞けって・・ったく仕方ねぇなぁ〜」


先に走り出したキバをくつくつと笑いながら
シカマルが後を追いかける


足の脛に水の抵抗を感じながら
キバが大きな水しぶきを上げ
その後ろをシカマルがついて
ナルトの元へと走り寄る


スピードを落とさずナルトの元へと
キバが猪突猛進していたが
どんどん近付くにつれて
ナルトの顔から笑顔が引いていくし
何やら此方に向かって叫んでいた


「ナルトしっかり網持ってろよぉおお」


ナルトの叫び声は、叫ぶキバの声と
キバが足で蹴りあげる水しぶき音で
キバ達の耳には届いていなかった。


「まてぇえええ止まれってばぁあああ」


と、叫んでいたのに・・・
今のナルトは、キバのあげた水しぶきで
頭のてっぺんからびしょ濡れである。


「ぶっふぉぉ何だナルトお前びしょ濡れじゃんか!」


「・・キバが走って来た時の水しぶきのせいだってばよ・・」


「あ″・・・わりぃ」



シカマルもキバの水しぶきまでは
計算していなかったと謝ってくれたけれど
もうびしょ濡れになってしまった服をどうする事も出来ない。


キバはナルトが怒っていたと思ったが
次の瞬間に、腹を抱え弾けんばかりの笑顔を
キバとシカマルに向けた。


その姿に、釣られるようにキバとシカマルも笑いだした。


笑いあう3人の声を遮る様に一陣の風が吹き付け
目の前に見慣れた銀髪長身の男が現れた。


「なーに楽しそうに笑ってるのかな?」


「「「カカシ先生!?」」」


顔の半分以上が覆面で隠れていて
いつも少し怪しい雰囲気のカカシだが
見えている右目が弧を描いていて
何とも楽しそうな感じに見えた


「・・・俺も仲間にいれてヨ♪」


突然の仲間に入れて宣言に


「先生も俺達と遊びてーのか?」


と、ナルトが問うと
カカシが少し驚いた顔をする


(いやぁー本気で言ったわけじゃないんだけど)


「お前は可愛いね〜
でも、ナルトとは一緒に遊びたいかな・・・」


真面目な顔つきで言うと
カカシはいきなりナルトを御姫様抱っこした。


「うわわ///急に何するんだってばカカシ先生!?」


「んーよく見たらお前びしょ濡れだし
俺の自宅に連れて行ってタオルで拭いてやろうかなと思ってさ♪」


(そして明日は下忍の任務が入ってるから
このままだと風邪ひくとか何とか言って服を脱がせて、
あわよくばお風呂に一緒に入って身体洗いっことかしたいよネ♪)


笑うカカシの顔がどんどんだらしなくなっていき
それを見ていたシカマルは、この大人はイケナイ妄想をしてると解析して
めんどくせ〜人に見つかってしまったなと、ため息を吐いた。


カカシが太い木の幹を見つけ飛び去ろうと少し屈んだ瞬間
ちょっと待ったぁああ、とキバが声を張り上げた。


「俺らが連れて行くんで大丈夫っす!」


キバにしては珍しい真面目な顔で
自分よりも断然に背の高いカカシを見上げ
その腕に抱かれたナルトを見詰めながら問いかける。


(あ、コイツもナルトの事・・・)


「ん〜でも俺ナルトの事愛し過ぎてて解放してあげれないカモ♪
それに、このまま連れ去りたいし、その案は却下だな!」


「「「!!!」」」


まだ幼い3人に、この大人は平然と
衝撃的な愛の言葉を発した。


告白をされたナルトはカカシの腕の中で固まり赤面している。


「ナル〜トサクランボみたいに真っ赤だね
今の言葉で先生の事意識し始めちゃったのかな?」


自分の事を意識し赤面する可愛いナルトの顔を見たくて
カカシが覗きこもうと頭を垂れると



ガツーーーーーン!!!


カカシの額を鈍痛が襲い、脳みそを揺らした。



「お、俺はかかっ先生の事なんか意識してねぇええ!」


そう叫ぶと、カカシの胸元から勢いよく逃げ出して森へ消えていったが
耳朶まで染めた顔で言ってもその言葉には真実味が足りなかった。


カカシは大人気なく、残されたキバとシカマルに
勝ちほこった顔を向けるとナルトの後を追いかける。


((っ!こんなおっさんにナルトはやれねぇ!))


突如現れた最強のライバルに焦るキバとシカマル


キバが自慢の嗅覚を使い必死にカカシを追尾し
その後をぴったりとシカマルが追う


シカマルは先を行くカカシをいつでも捕えられるようにと
手を胸元で組み木の枝枝を飛躍する。


先導を行くキバが、木の枝に足を掛けた瞬間
カチッと言う音と共に小規模な爆発が起きた。


「「うわっ!」」


アカデミーの忍でなければ
軽く病院送りになる爆風を避けたものの
バランスを崩した、キバとシカマル


「まじ、あのおっさん大人気なさ過ぎだろ!」


「本気でいくしかねーな・・・」


IQ200のシカマルの目が続く森を見詰める。





遠くで聞こえた爆発音にカカシはほくそ笑む


あの爆発はナルトと自分の追随を許さないと
カカシが仕掛けていった起爆札つきクナイによるものだった。


(やりすぎたかな〜ま、犬塚家と奈良家の跡取りが
あんな事くらいで、やられる訳もないよね〜)


遠くから感じる自分への殺気を感知してカカシは
こんなに楽しい気分になったのは生まれて初めてかもしれないと思った。


(年甲斐にもなく好きな相手を賭けて
アカデミー生と追いかけっことはね♪)


我ながらどうかしてるなと、思いながらも
このおかしいほどの歯痒さが今のカカシには堪らないのであった。









end・・・・・・






あとがき



私は一部のこの三人がつるんでるのを見るのが
大好きなのですがー(短編ss読んでる人は気付いてる筈w)


そこにカカシを放り込んだら面白そうと思い・・・
書いてみたらやはり楽しかった///


カカシ先生がアカデミー生相手にムキになってる姿っていいですね!
また書きたいな(^^*


ここまで読んで下さった方がいましたら
本当に有難う御座いますm(、、*m



2012.12/19 犬居

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