【短編集】

□シカ誕・欲しいもの
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歳を重ねる毎に
己の世界は
両手で抱えきれぬ程
勝手に広がっていき


新しい出会いをもたらす。


結果
昔の出会いと繋がりは
自然と薄くなり途絶えいく。


それでも
昔を懐かしみ
集まるこの時は


理由がなければ
成立さえしないのかもしれない…





【 欲しいもの 】






「「「シカマルおめでとう!!」」」


この歳にもなって
誕生日の祝いをしてる奴なんて
そうそういないだろう…


脳内でぼやきながらも
シカマルの口元は
緩んでいる


「はぁ〜おまえら暇人だな...」


笑いながら吐く言葉に集まった
いつもの同期メンバーは
「お前もな!!」と返す


久しぶりに集まろうと誘ったのは
お祭りごとが好きなキバだった。


しかし
キバみたいな奴が
人の誕生日など
調子良く覚えている筈もなく…


誰かが教えたのは明確。


9月22日が
シカマルの誕生日だとキバに教えたのは
イノかチョウジだろうか?


ざわめく居酒屋を気にもせず
隣で騒ぐキバをあしらいながら
頭の片隅で考えるシカマル


お誕生日会の主役は
犯人を見つけるべく
意識の奥深くで解析中である。


「本当、すっかり忘れてたわよ
シカマルの誕生日!
サスケ君の誕生日なら
未だに覚えてるのに〜
やっぱり好きだった人の事は
そう簡単に忘れられないのよね〜♪」


イノの声が耳に入る


(…イノじゃないなら
やっぱりチョウジか?)


チョウジとは長い付き合いで
いまだ私生活でもつるむ事が多い


多分このメンバーの中でなら
一番多く自分の誕生日を
一緒に過ごしている


「なぁ…チョウジ」


「ん?どうしたのシカマル?」


「お前、今日の事
キバに言ったか?」


「今日の事?
…あぁシカマルの誕生日って事?」


そうだというと


「言ってないよ?
だって僕昨日まで長期任務で
里に居なかったし
それにこの宴会室予約するのって
確か1週間前からでしょ?
僕ではないよね。」


ズバリ違うと
理由付きで言われてしまえば
他に誰がいるのだと
思考が停止する。


他に誰が・・・


集まったメンバーを見渡し
シカマルがふと気付く


(何で居ないんだ?)


キバに次いで
いつもその存在を
騒がしい程にアピールする
お祭りごとが大好きなアイツが居ない


そういえば先程から
キバがやたらと自分に
絡んでくると思っていたが


理由は簡単で
一緒にバカ騒ぎしてくれる
相方が居なかったのだ。


「おい、アイツはどうした?」


隣で騒ぐキバに問いかける


「あん?アイツってドイツだよ?」


すでに酔い始めているのか
目が据わっていた


(チッ…めんどくせぇ)


「ナルトだよ」


名前を出してやれば
やっと分かったのか
最初から名前で言えよと
キャンキャンと
犬のように吠えかかってくる


「アイツ
急に綱手様に呼ばれちまって
今頃は火影室で書類の山と格闘中だぜ

当初はナルトが幹事だったのによ〜
俺を代役にしたんだぜ?
まっ俺は飲めればそれでいいけどよ♪」


ナルトが幹事?


可笑しい…
アイツが幹事なんてする筈がない


アイツは...ナルトは...


昔から九尾の事で
里から忌み子として扱われ
今でこそ英雄と称えられているが…


未だ心の傷は深いのか
一楽以外の店には
独りで行く事は滅多にない


少なくともナルトと出会ってから
幹事を率先してする姿を
シカマルは見た事がなかった。


何故?


シカマルの答は出ない


答を持つであろう人物は
急な任務でここには居ないのだ。


一旦頭を冷やそうと
少しだけ酒に酔った
気だるい身体を立たせると
トイレへと向かう


用をたし席に戻ろうとすると
店員に声をかけられた


「すみません
お客さん奥の宴会席の方ですよね?」


そうだと答える


「…これ
そろそろ出してもいいですかね?」


店員の手には
白い箱と封筒


白い箱はケーキだろう
貼られた賞味期限のシールが
抱える店員の指の合間から見えている。


店員は多分ナルトに指示され
これを出すようにと
言われていたのであろう…


しかし
確認をした人が悪かった。


「俺が渡すんで
いいっすよ」


渡される筈の本人だが
封筒が気になり
箱と封筒を受け取る。


頼まれていた物を
渡した店員は
厨房へと戻っていく


それを確認して
封筒へ指を差し込む


『 シカマルへ

今日は急な任務が入って

会って言えないから

手紙で伝えるってば

お誕生日おめでとう

みんなと

楽しんで思い出を残せってばよ♪ 』


普通の祝いの言葉が書かれた
文章の短い手紙だった。


それでもシカマルには
とても嬉しかった


ナルトとは昔からの
付き合いだが
手紙を貰ったのは初めてで


しかも当初は
この誕生日会の幹事まで
していたと知った。


ナルトの柄にもない
その行動に手紙に


シカマルは込上げてくる
感情を言葉にしたくて


抱えていた箱を
キバに渡しこの場を去ろうとした


「おい!シカマル
お前の誕生日ケーキ置いて
どこ行くんだよ!?」


走り去ろうとする背中に
声を投げかければ


「お前等で食え
俺はそのケーキ買った奴に用事が出来た」


言葉を残すと
更に速度をあげて走り去った。


「はぁ?
何あいつ・・・」


キバは溜息を吐き
主役の居なくなった部屋で
ケーキの箱を見つめ呟いた。
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