【短編集】

□夏祭り
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”夏祭り会場”



普段の木の葉も活気があるが
この日は格段に違った


道行く女性達は
鮮やかな浴衣に身を包み


木の葉のメイン通りには露店が連なり
その匂いに人々は誘惑される。


久しぶりに訪れたその人もまた
この特別の日にと用意された
浴衣を身に纏い歩いている。


「すげーじゃん!!」


いつもの黒い装束を脱ぎ捨て
男物の浴衣を着たカンクロウが
楽しそうに露店を覗き込んでいる


「おいカンクロウ!
一応来賓として来ているんだ
あまりハメを外し過ぎるな!!」


そう声を掛けるテマリだが
紫色の浴衣に身を包み
その表情は楽しそうだ


「我愛羅は久しぶりの休暇じゃん?
もっと楽しそうにしろよ」


2人から少し離れ
歩いている我愛羅もまた
髪の毛と同じ色の
男物の浴衣を着ているが


普段の無表情プラス
眉間の皺1本で
機嫌が凄く悪そうだ。


今に関係なく
我愛羅は朝からずっと機嫌が悪かった


「ナルトか?」


テマリは弟が唯一興味を持っている
人物の名前を口にする。


我愛羅は朝から常に
自分の視界の中で
あの金糸を探していた。


木の葉に来る数週間前に
我愛羅は手紙を出していた。


だから直ぐに会える
会いに来てくれると思っていた。


しかしあの金糸が
自分を訪れる事はなかった。


楽しみにしていたのは
自分だけだったのか…


我愛羅の眉間の皺がまた1本増える。


「我愛羅…
後で火影に会ったら聞けばいいじゃないか」


テマリの提案に我愛羅は少し頷き
露店から香る誘惑には目もくれずに
火影塔へと歩を進めたのだった。
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