本棚

□優しい笑顔
3ページ/15ページ


「………あや…み………あやみ……彩水」

 真っ暗な暗闇の中から聞き覚えのある懐かしい声が聞こえて、その声に私は目を覚ました。

「大丈夫?彩水…少し疲れてるんじゃない?」

「えっ…」

 私の目に映ったのは、病院のベッドに座るお母さんの姿。

「お母さん…どうして」

「泣いてるけど、怖い夢でも見たの?」

 お母さんの手が私の頬に触れて涙を拭き取る。
 本当だ。私は泣いていた、私は海に落ちてどうなってしまったのかな…生きてるのかな…
 そうだ…里奈さんは!無事…なのかな…
 生きていてほしい…里奈さんだけでも生きていてほしい。

「里奈さん…里奈さん!」

 私は里奈さんの名前を呼び、身を案じる
 拭えない不安が私を締め付けている。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ