柚紀の夢

□一緒に居たい
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―…雲雀さん、起きて下さい


優しい声で、毎朝僕を起こしてくる君。

まあ…もちろん僕は起きてるんだけど。

面白いから、もう少しだけ寝たフリだ。



「…起きないですね…」


僕の肩を気まずそうに叩いて、何度も起こそうと試みる僕の妻は、本当に可愛い。

起こそうとしてるのに、起しちゃいけないと声が小さくなっていく。

全く、変なところで気を遣うんだから。


「あ…の、朝ごはん、冷めてしまいますよ…?」


あ、オロオロし始めた。

どうしようかな、起きようかな。


「…こんなになっても起きないなんて…」


次は僕の体調を心配し始めた。
風邪?とか、もしかして熱?なんて声も聞こえてくる。


違うよ、と僕は心の中で呟き、
起きる代わりに彼女の手首を引っ張った。


「え…ッ、!?」


いきなり僕の腕の中…ていう状況が読めていない彼女のおでこに、優しくキスを落とす。


「な…!!も、もしかして、起きていたんですか…!?」

「うん」


顔を真っ赤にさせた君は、僕の腕から逃げようと起き上がった。
…起き上がる前に抱きしめたけど。


「あ、あの…!!」

「ダメ」

「へ…?」


朝ご飯が覚めようが、関係ない。


「僕は君と一緒に居たいだけだよ。
…もう一回寝よう」

「な、何をおっしゃってるッ…!?」


なんとか僕の腕から逃げようと言葉を紡ぐ彼女の唇を、人差し指でそっとなぞるように触れた。

それだけで顔をさらに赤くして何も言えなくなった君を、僕は布団の中でもう一度抱きしめる。






一緒に居たい
(ただそれだけの理由だけど、何か文句ある?)



――――

拍手ありがとうございました!!
柚紀

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