柚紀の夢

□スイーツよりも甘いもの
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「好きなんだよなぁ」


クレープ、という前に、目の前にいた颯斗君が持っていた書類を床にぶちまけた。


「…大丈夫?」


「…はい」


あれ?私なにかまずいこと言った?

いや、私はただ空に浮かぶ雲を見てクレープを連想してただけだし。


そんなことを考えながらぶちまけられた書類を一緒に拾う。


「あの、」


「ん?」


「…好きって、誰を、ですか」


………え?


いや、ちょ、何言ってるか分からん。
というかどこをどうしたらそうなる。


「…みんな良い人だけど」


「…そうじゃないです」


見当違いの答えをしてしまったようだ。
えー…なんて言えばいいんだろう。


しばらく言い淀んでいると、颯斗君が口を開いた。


「さっき、呟いてたじゃないですか」


「さっき…」


えーと、さっきっていうと…


……まさか、


「好きなんだよなぁ…っていう、あれ?」


恐る恐る聞くと、案の定颯斗君はそうです、と黒いオーラを纏いながら頷いてくる。


「…ふ、」


思わず笑ってしまった。


「なんで笑うんですか」


「だって…」


書類を拾う手を止めて、颯斗君の目を見つめる。


雲が、クレープに見えたから好きなんだよなぁって言っただけだもん。

そう告げると、


「な……」


目の前にいる颯斗君は絶句して口をパクパクさせていた。

そんな颯斗君にまた笑う私。
すると、


「良かったです」


そう言いながら、そっと私の頬にキスしてくる。


「……な!!?」


「僕は、貴女がLOVEで好きです」


……………突然に告白に固まる、というか固まってる。


「…私も、好きです…よ?」


テンパった先の答えが疑問形って何なの私…。
心の中で羞恥に駆られていると、颯斗君は優しい笑みを浮かべて、手に持っていた書類をまたぶちまけた。


「本当、可愛いです、貴女は」


あぁ、また書類拾い直さなきゃ。

そんなことが脳裏をかすめたけど、
唇に触れている甘い感覚に、そんなこと、どうでもよくなった。





[スイーツよりも甘いもの]


(颯斗君、大好き)
(甘いものなんか、目に入らないくらい)


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