novels*゚TIGER&BUNNY

□ゆっくりと。
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ゆっくりと。


ゆっくり、距離を縮めていけばいいさ。





「おじさん」から「虎徹さん」に、呼び方を変えて。




毎日、「虎徹さん」と
好きな人の名前を呼べることが幸せだ。






幸せすぎて、何回も何回も呼びたくなるけれど
我慢しなきゃ。






虎徹さんは相変わらず「バニー」と僕を呼ぶ。







僕のことをそう呼ぶのは虎徹さんだけだから、すごく嬉しい。








「バニー、どうした」








隣には虎徹さん。

僕の部屋の床にふたり。


大人がごろごろ、寝転がっている。







「いえ、何も」





「嘘つけ!」







言ってみろ、なんて。




じゃああなたは、『キスより先のことがしたい』と言ったら受け入れてくれますか…?










「ほら、水くせぇぞバニー。言ってみろって!」




笑顔で。


笑顔で。







「…今から言うこと、独り言ですからね」







恥ずかしくなって、そっぽを向く。










「…?おぅ、分かった」







「虎徹さん」











「…僕を、抱いてください」









言った。言ってしまった。


もう戻れない。


赤くなる顔。




その熱は全身に広がって、体中をつつむ。










「…独り言、か」










その声に振り向こうと、寝返りをうった体。







その上には、にやにやと笑う虎徹さんの顔があって。







「そんな独り言、俺が放っとく訳ねーだろ?」








そうだ。



こうなることくらい、分かってたじゃないか?








「こ、虎徹さん」





「…お前が抱けっつったんだろ」







そう言いながら、反論しようとした僕の口を塞ぐ。



……………


「本当は、もっとゆっくり距離を縮めたかったんだけどな」





「……襲ったのは虎徹さんじゃないですか」






「誘ったのはバニーだろ」








そんな言い合い。




ゆっくりと。




二人の時間は流れていく。

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