novels*゚TIGER&BUNNY
□つんでれラプソディー!
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「お、バニー奇遇だな。ショッピングか?よし、俺が案内してやる」
今日は出動要請もなく、今のところ至って平和なシュテルンビルト。
あぁ、ずっとこうしていたい。
街を当てもなくぶらぶらしていた。特に欲しいものも、見たいと思うものもない。
ただ、気晴らしに歩いていた。
なのになんで、僕の隣に。
「バニー、あれ!あのアイス美味しいんだぞー!奢ってやろうか?」
子供みたいに露店を指差してはしゃぐ、おじさんが。
「…いえ、結構です」
ついっ、とそっぽをむく。あぁ、本当はこんな態度なんて、とりたくないのに。
どうしてこうも素直になれないんだろう?
答えは解っている。
彼に、気持ちを知られたくないから。
僕にこんな感情を抱かれたおじさんは、僕をどう思うだろう。
そう考えると、素直に気持ちを表すなんて出来なかった。
「ん?バニー、俺の話聞いてる?」
いつの間にか、彼の声まで聞こえなくなっていた。いけないいけない、とぱちぱち、軽く頬を叩く。
無邪気で、でも僕よりずっと大人な茶色の瞳に、僕が映る。
「アイス、買ってきてやるよって言ってんだ。何味がいい?」
にかっ、と笑う顔はただただ愛おしくて。
「…あなたに、任せます」
しばらくして。
満面の笑みで両手にアイスを持つおじさんがひとり、小走りで僕のもとへ。
「ほら、コレ俺のオススメ!味わって食べろよ」
そう言って差し出された、チョコが沢山かかったアイス。『チョコまみれの殺人アイス』という異名が付くのに納得がいくくらい、チョコにまみれている。一体何が殺人なのかは分からないが。
異名はともかく、味は良かった。元々甘いものは好きではなかったけれど。彼がすすめてくれたからだろうか?
「どうだ?美味いだろ!何せ俺のオススメだからな!」
ああ、この笑顔。やっぱり好きだ。
「はい、美味しいです。ありがとうございます」
あ、今。
素直に気持ちを言えた。
自分に自分で驚く。
「……やっと素直になったか?バニーちゃん」
いたずらっ子みたいに、にやにや。
その瞳に、唇に、もう彼の全てに溺れきっていた。
だから、反論なんてできるわけないじゃないか。
「ツンデレだな!バニーちゃんは」
「一言余計ですよ、おじさん」
でも、あながち間違いではないから恥ずかしくなって目を伏せた。
そんな僕らの休日は緩やかに過ぎていく。