短編小説

□サイアクのヤクサイ
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貴女がはとても裕福な家庭に生まれ、頭脳明晰、運動神経も抜群。そして美しい容姿。
と、誰もが羨むような人でした。
人生に、勝ち組、負け組があるのなら、貴女は間違いなく勝ち組。
『勝ち…組』
ですが貴女は何でもできる、たくさんの才を持つ自分を心から嫌っておりました。
『自分が…嫌い』
えぇ、そうでしょうとも、自分を羨み、妬む視線。
欲を丸出しにして近づいてくる大人。
そんなもの、まだ小学生である貴女には耐えられませんでした。
『私は…私は…』
そんな時でした。貴女に近づいてくる、たった1つの光を見たのは。
〔何で泣いてるの?〕
『泣いてる…?』
〔泣いてるじゃない。心が…たとえ他の人には分からなくても私には分かる。双子…でしょ?〕
彼女の名前はクア=サイ、貴女の双子のお姉様でございます。
自分のお名前はお分りになりますか?
『クヤ…=サイ?』
はい。
〔大丈夫、貴女はもう…泣かなくていい〕
『ク…ア…』
お姉様はそれはそれは、ご立派な方でございました。容姿こそ貴女とそっくりでございますがクア様は妹の貴女の事をいつも心配なさって。誰からも好かれる、優しい人でございました。その代わり貴女とは違い才などありませんでした。

そんな姉を見た貴女は、自分も姉のようになりたいと願います
『才なんて…いらない…クアみたいに…皆とお喋りして…遊びた…い』
そして……
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