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□夜明けまで
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敦子の歌の中に『夜明けまで』という曲がある。



これを聴く度につくづく官能的な表現が気にかかる。

敦子の声で一段とこの歌がいやらしく聞こえてしまうあたしは変態なのだろうか。




そんな今は、楽屋にて待機中でイヤホンをして聴いている。




「みなみー!」

「わっ!びっくりしたー…」




いきなり片方のイヤホンを抜いてあたしの名前を呼ぶもんだから、思わず叫んじまったよ。


そう考えてた本人の敦子。




敦子はイヤホンを取ると耳に入れて一緒に聞き出した。




「あ、これあたしの歌じゃん」

「そだよー」



ここは1つ聞いてみたいことを聞くべきだろうか。

誰との情事を浮かべながら歌ったのか、とても気になる。




「ねー敦子」

「なにー?」


「このレコーディングの時、どんなこと考えて歌ったの?」

「え!?」




そんな質問をすれば敦子は頬を赤く染めて、狼狽えだした。




「だってさー歌詞、官能的じゃん?」

「そうなんだよね」


「そうなんだよねってなんや」





すると敦子はあたしのイヤホンを外して、耳元でこっそりと囁いた。





「みなみとのえっち考えながら歌ったの…」

「…え?」




叫ぶ所か驚き過ぎて声が出ない。

いや、若干まさかとは思ってなくもなかったけど?現実に面と向かって言われると…



2人して顔を赤くして照れ笑いを浮かべる。




「あーもう言わなきゃ良かった!!」

「…まじか」


「はぁ…ばかみなみ」

 


ヤバい。

すごい敦子がかわいい。


恥ずかしそうに両手で顔を隠して、大胆なこと囁いてながら…




「敦子ー」

「今度はなにー?」


「今夜敦子んち行くね」

「へ?」


「敦子を食べに。なんて」




そう笑って言えば、頭をぺしっと叩かれて立ち上がって行ってしまった。



ありゃ…ちょっと調子乗りすぎたか…





でも、敦子はクルッと振り返って戻ってきて耳元で言ったんだ。





「夜明けまでは勘弁だよ?」






敦子も十分変態ですな。







End

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