A

□1年に1度
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今日であたしも23歳。

歳を取る度にどんな年になるんだろうと想像すると楽しくなる。





そんな誕生日の今日は1日ドラマの撮影。


でも、早く帰りたくて仕方ない。




何でかって言うと、家であたしの大好きな人が待ってるから。

誕生日を祝ってくれるって言うから、楽しみで仕方ない。





撮影を終えて足早に家に帰る。


タクシーに乗り込んで早くつけと苛立ちを覚えたのはいつぶりだろう?



それくらい今すぐ会いたい―





ガチャッ―




「ただいまー!!」



…あれ?返事がない。

靴は玄関にある。


電気も付けっぱなし。




恐る恐るリビングに入ると、そこにはソファーに寝転がってスースーと寝ているたかみなが居た。


携帯をしっかりと両手で抱えて、テーブルに並べられた料理はきっとたかみなが作ったのだろう。





「…寝てたのか」




寝ているたかみなに近づいて、"ただいま"ってもう一度言う。

寝顔のたかみなもかわいくって、髪の毛を優しく撫でる。




「…ん………ゆうこ?」

「あ、ごめん起こした?」




眠たそうに目をこすって、こっちを見るたかみなはなんだか小動物みたい。



 
「おかえり」

「ただいま」



本日3回目のただいま。

でも、そんなのどうでもいい。



目の前で笑顔をくれる大好きな人が居れば。




「あ、料理温めなおすね」




そう言って起き上がってキッチンに向かうたかみな。


いつもは男前なたかみなも今日ばかりは奥さんに見える。

なんて自惚れだろうか。




「優子手伝ってよー」



今日はあたしの誕生日のはずなのに、相変わらずいつものように使われてしまうあたし。

ほんと好きな人に弱い。




「今日あたしの誕生日だよね?」

「そうだよ?」




何言ってんのこの人?って顔で頭をひねって料理を並べ直すたかみな。




「あたしもてなされる側だよね?」

「うん、だから料理作ったじゃん!」




なんかたかみなに何言っても無駄な気がしてきた。

ま、そんな細かいことなんてどうでもよくてたかみなの作ってくれた料理を食べる。




「おいしい?」



正面じゃなくてなぜか隣りに座って、人の顔を覗き込むたかみな。




「うん、美味い!」

「やったー!作った甲斐あったわー」




たかみなが作ってくれた料理もたいらげて、2人でまったりとソファーにもたれかかる。


てか、まさか誕生日のお祝いあれだけ?



いや、たかみなに限ってそれはないだろ。




「あたしお風呂入ってくんねー」

「あ、うん」




お風呂へ行ってしまった。

まだおめでとうの一言も聞いてないし…いったいどういうことだ?



なんて悶々と考えていればあっという間に時は過ぎて、たかみながお風呂から出てきた。


交代であたしもお風呂に入って、出てきた時にはたかみなはもうベッドの中。




おいおい、まさかもう寝るのか?





なんて思いつつもベッドに入る。

電気を消して、枕元の小さなオレンジ色の灯りだけが光る。




たかみなは背を向けてこっちを見ない。




「…たかみな?もう寝たの?」



そう言えばゆっくりと身体をこっちに向けてこう言った。




「あのね…誕生日プレゼント、買う時間なくて、買えてないの…」

「なんだ。そんなのどっちでもいいのに」



「それでね?……今日は誕生日プレゼントの代わりって言うか…」




なんかたかみながモジモジしてる。

か、かわいい…



その瞬間驚くべき言葉が聞こえた。




「だからね……今日は好きにしていいよ?」

「……へ?」



今、なんておっしゃいました?




「だから…好きにしていいよ…?」




上目遣いで、甘えた声で、そんな色っぽい表情で言われたらいてもたってもいらんないよ。


たかみなの上に馬乗りになって、口づけを交わす。





「…いいの?」

「…うん」


「手加減しないよ?」

「うん…」





今日はもしかしたら最高の誕生日かもしれない。


誕生日プレゼントがたかみなって、完全にやられた。



もうおじさん、たかみなにメロメロだよ。







「あ、そうだ」

「ん?」


「誕生日おめでとう」






End
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