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□年下の恋人
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歳の差5才。

身長差約20cm。



そんな相手があたしの恋人。






今日もいつものように仕事を終えて自宅に帰る。


携帯をいじりながら、マンションに入ろうとした時だった―







「お疲れさま」

「わっ!!えっ!?なんで居るの!?」




そこに居たのはマンションの入口の壁に寄りかかって待っていたみなみだった。

満面の笑みでちょこんと目の前に立つ。





「なんでとは失礼な!」

「もしかして…ずっと待ってたの?」


「んー…まあ…」

「いつ帰って来るのかもわかんないのに?」


「たまには待つのもいいかなって」




この生き物は馬鹿なのだろうか。

何時に終わるかわかんない人間を外で待ってるなんて。



でも、でも…嬉しくて笑ってるあたしが居る。



みなみも照れたように笑って、そんなみなみを部屋に招き入れた。






「来るなら電話とかしてくれれば良かったのに」

「それじゃあサプライズにならないじゃん?」


「…あ、そう」




なんか言い返したいのに今日は何もいえない。


ベッドに座るあたしの隣りに寝転がって天井を眺めてる。




そんな呑気なみなみがかわいくて、あたしの胸はキュンキュンしてる。





「あ、今日泊まってくんで」

「え?」


「ちゃんとお泊まりセット持ってきました!」

「いやいやそういう問題じゃ…」


「じゃあどういう問題ですか?」




なんて拗ねた口調で言って起き上がってあたしを見る。



あたしの方が年上なのにみなみの前じゃ余裕なんてまるでないし、篠田麻里子の欠片もなくなる。


みなみなら何でも許しちゃうダメな大人になる。





「なんでもありません…」

「へへっー♪」




無邪気に笑って、また寝転がるみなみ。

そんなみなみの隣りにあたしも寝転がって、身体を向ける。





「お?…麻里子さまが甘えたや」

「うるさーい」



みなみの頬を抓ればこっちを向いて、向き合う形になる。

なんだか恥ずかしくて、少し俯いた。




「かわいい」




そう言ってみなみはあたしを抱き寄せて頬にキスをした。




「なんか…今日のみなみ大胆じゃない?」

「うーん。まあ久しぶりに会えて嬉しいので」


「確かに久しぶりだよね」

「まー押し掛けたようなもんだけど」


「最初ストーカーかと思っちゃった」

「うをいっ!!」




冗談っぽく言ったけどちょっとホント。なんて言うのは可哀想だから言わないけどね。


拗ねたみなみはぷいっと反対側を向いて、背中をあたしに向ける。




「あ、拗ねた」

「…すねてないし」


「そんなに拗ねるとスネ夫くんになるよ?」

「おもしろくない」




ばっさりネタを切られた所で、あたしはその背中を後ろから抱きしめた。


小さくて温かくて、落ち着く。




「ごめんね?みなみ」

「…別に最初から拗ねてないもん」




そう言えばくるっとこっちを向いて笑ってる。


2人の距離は近くて、今にもキスをしそうなくらいの顔の近さ。





「麻里子さま」

「ん?てかその呼び方やめない?」


「え、じゃあ…ま、麻里子?」




相当名前呼びが恥ずかしいのか、照れたように笑う。

でも、そんな呼び方もなんだかあたしにはくすぐったくてドキドキしちゃう。




「何言おうとしたか忘れた…」

「ばかでしょ」


「なんだっけ?」

「愛の言葉?」


「ち、違います!!」




そんな恥ずかしいからって、全力で否定しなくてもいいじゃん…




「あ、今落ち込んだでしょ?」

「はい?」




顔に出てないはずなのにみなみにはいつも見透かされる。


すると、みなみにソッとキスをされた。





「好きだよ。これからもずっと」

「…恥ずかしいわ」




今絶対に顔真っ赤。

みなみが普段そんな言葉をくれることも、大胆な行動することもなくて今日はあたしがあたしでいられない。




これも全部みなみのせい。




でも、そんなみなみはあたしの大切な年下の恋人。






End

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