A

□If…
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※『Stay with me』続編




あの日から少し、たかみなに距離を置かれてる気がする。


話に行こうとすれば、避けるようにどこかへ行っちゃうし。





なんでかな…





あの時、抱きしめたのは何だったの?


好きだから、抱きしめてくれたんじゃなかったの?




だから、だから陽菜だって…







優子が居るのに何言ってんだろ。



でも、あの時あんな言葉を言った時点で陽菜の気持ちはたかみなに向いていた。





"たかみなにしとけば良かった"





もし、もしあの時。

たかみなが陽菜の手を取って、優子から奪ってくれたら、多分あたしは…




「じゃあ次、小嶋さんと高橋さんお願いしまーす!」





こういう時に限って、たかみなとペアでの撮影。

ツイてるんだかツイてないんだかよくわかんない。





仕事上でのたかみなは普通に接してくれる。


なのに撮影が終わった途端、すぐに離れて陽菜の傍から消えようとする。





ねぇ、なんで陽菜と距離置こうとするの?


たかみながわかんないよ…





「こじぱーちょっとこっち来てよ!」




楽しそうにはしゃぐ優子に手を掴まれた。


たかみながこっちを向いて、この前と同じ状況。





この手を取って、陽菜を奪ってよ。


ねぇ、気づいてよ…





たかみなを見つめて訴えかける。

この想いなんてたかみなは気づかない。



もういいよ…






視線を優子に向けたときだった―




ドクン― 




「お?」




陽菜の手が優ちゃんから離れた。


陽菜が離したんじゃない。

もう片方の手をたかみなが引っ張ったから、離れちゃったんだ…





「…たかみな?」

「撮影。撮り直しだって…」


「なんだよー!じゃあこじぱ先に楽屋行ってるね?」

「あ、うん」





なんだ…陽菜を引き止めたくて手を取ったわけじゃないんだ。


この胸のドキドキ返してよ…




たかみなは俯いて、何も話そうとしない。


もう辺りにメンバーは居なくて、スタッフさんと陽菜たちだけ。




「撮影、行かないの?」




繋がれたままの手。

小さくて、あったかくて、ずっと欲しかった手。




「ごめん」

「え?なにが?」


「撮り直しなんて嘘」

「…え?」




相変わらずうつむき加減のたかみな。


嘘って…



ドクン、ドクン―




ねぇ、期待してもいいのかな?




「なんで?」

「……そうして欲しそうだったから」


「え?」

「にゃんにゃんが…優子から奪ってって、言ってるような目してたから…」





気づいてたんだ。

わかってたんだ。

陽菜の気持ち。



たかみなのくせに…ムカつく。





「…ばか」

「へ?」



やっと顔を上げた。

恥ずかしそうに、困ったように陽菜を見つめる。




「遅いよ…ばか」

「にゃんにゃん―…」




たかみなの唇を塞いだ。

スタッフさんなんてこっちを見てない。



初めて交わすキス―






「ねぇ、陽菜を奪ってよ」







End

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