A

□ほんの少しだけ
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パリから帰って来て、一目散にたかみなの家に向かった。


荷物も全部持ったまま、たかみなの家の前で呼び鈴を鳴らす。




一向に出てこないから、持っている合い鍵で中に入る。




早く会いたい。





その一心で靴を脱いでドタバタと廊下を走って、リビングに向かえば"おかえり"と満面の笑みのたかみな。




「なんだよー!居るなら開けてくれてもいいじゃん!」

「ん?意地悪」




たかみなはいつもほんの少しだけ意地悪をする。

それはちっちゃな意地悪で、本当に子どもみたい。




ソファーでにゃーちゃんと戯れるたかみなの隣に座って、一緒ににゃーちゃんと戯れる。




「パリどうだった?」

「すっごく素敵だった!」


「いいな〜オシャンティーやな」

「オシャンティーって…」




たかみなの膝の上からにゃーちゃんは飛び降りて、どこか行ってしまった。




「にゃーちゃん行っちゃった」

「敦子が来たからじゃない?」


「それどーいうこと?」




ほら、またそうやって意地悪する。

小学生かよ…




「嘘嘘。多分、気使ってくれたんじゃない?」

「え?」


「久しぶりの再会だから」




そう言ってあたしの手を取って、チュッと甲にキスをする。


たかみなはほんの少しだけ、たまにお姫さまみたいにあたしを扱う。



正直、ちょっと照れる。





「ほんと…久しぶり」

「会いたかった?」


「うん…」




わかってるくせにそうやって聞く。

顔笑ってるもん。




「キス…してい?」

「いつも聞かないくせに」


「なんとなく?」




重なる唇。

久しぶりに交わしたキス。



ドキドキと初めてのキスのように胸は高鳴る。





「えっちなことしてい?」

「それも聞かないくせに…」




何度となく交わす口づけ。

舌と舌が絡み合う深いキス。





「ダメ?」




あたしはほんの少しだけ意地悪をする。




「…だめ」

「えーっ…」




本気でしょげるたかみな。

それがまた可愛らしい。




「いつもの意地悪の仕返し」

「ん?なんのこと?」





たかみなはほんの少しだけ、たまに無意識に意地悪をする。

とぼけてるわけでもなく、本当になんのこと?って思ってる。





「もー…ばかみな」

「え?好き?」


「どーやったらそう聞こえるんだよ!」

「さぁ?」





今夜はほんの少しだけ、たかみなに意地悪をしよう―






End

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