A

□Stay with me
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※こじゆう前提



君が幸せならそれでいい―





そんなこと言ってられる状況なんかじゃない。



今、あたしの目の前で泣いている陽菜は1人の人のために泣いている涙。





そんな陽菜を抱きしめてやりたい。


でも、そんな事できない。





「優ちゃんの…ばか……」

「大丈夫だよ。にゃんにゃん…」





陽菜の前では"にゃんにゃん"としか呼べないあたし。

どれだけヘタレなんだろう。



もう何年も一緒にいるのに。





どうやら、2人は喧嘩したらしく優子が浮気したようで、うちに駆けつけてきて愚痴って来た。





"そんな浮気する奴やめちゃえよ"





なんて言えたら、どれだけいいだろうか。

でも、多分、陽菜が求めてる言葉はそんなんじゃない。





「たかみなは優しいよね…」

「え?」


「陽菜、たかみなにしとけば良かった…」





その言葉の意味も、どうせ陽菜は深くなんて考えてない。


どれだけあたしが陽菜を好きかなんて知らない。




だから、そんな言葉が言えるんだ。





「にゃんにゃん、それは本気で言ってるの?そうじゃないよね?」





ソファーに座って、クッションを抱きしめて座る陽菜は少し悩んだようにも見えたけど―





「でも、嘘ではないよ…?」

「…え?」





そんな言葉、言ってはいけない。





「た、たかみな…?」





気付けば陽菜を抱きしめてた。


少しでも、あたしの気持ちを知って欲しくて、気づいて欲しくて―






報われない恋なんてわかってる。





抱き返されたこの手も、きっと今だけだってわかってる。



でも、いいんだ。



それだけで幸せだから―






ピーンポーン―



その呼び鈴とともに離れた身体。


少し陽菜は俯いて、顔を反らす。





こんな時間、こんな時に来るのはアイツしか居ない。




玄関に向かえば、一目散に中に入って、陽菜の前で謝る優子…





「ごめん!本当にごめん!もうしないから!帰って来て…」

「優ちゃん…」





ほらね。


陽菜は簡単に優子のこと許しちゃう。




優子のことが好きだから。




コクンと頷いて、そんな陽菜を抱きしめる優子。





胸が痛い―


締め付けられるように、心臓が握りつぶされるように、あたしの心は苦しくなる。





「ごめんな、たかみな迷惑かけて」



優子は申し訳なさそうに謝って、陽菜の手を引いて玄関に向かう。





その時見せた、陽菜の振り向いた表情がどこか哀しそうに見えたのは気のせいだろうか。

 


空いた手を、こっちに伸ばしていた気がしたのは気のせいだろうか。





陽菜。


本当のこと教えてよ。





あたしは報われない恋?


それとも報われる?






もし、報われるのならば1つだけ言いたいことがある。







あたしの傍に居て―






End

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