StoryU
□Promise
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-高橋side-
「せーんせっ!」
「おわっ!なんだ亜美菜か…」
「なんだって酷くない?」
だって廊下でいきなり後ろから抱きつかれたらびっくりするし、一瞬敦子かと思ったわ…
まぁ敦子は学校じゃそんなことしないか。
「ねー先生って好きな人とかいるの?」
「へ?今日はまともな質問だな」
亜美菜の質問に少し鼓動が早くなる。
「いつもまともです。で?どうなんですか?」
「どうって……まぁ…居るけど」
そう言えば、亜美菜は"ふーん"と言って目を細めた。
この時点であたしは何も気がつかなかった。
「その人と付き合ってるんですか?」
「え?あ、いや、その…まあ…」
(どうせ敦子だってばれないし、大丈夫だよな?)
なんて考えは甘かったと後に気づくあたしはやっぱり馬鹿。
その後、どこの誰かと質問責めにあったがうまく逃げてその場をあとにした。
(亜美菜にばれたら絶対面倒なことになるよな…)
そんなことを思っていたが、もうすでに大変な事態が起ころうとしているなんて予想だにしなかった―
――――――――――
それから何週間か経ち―
今日は当直で学校の見回り。
遅くまで残っている生徒を学校から追い出して、さっさと帰りたいもの。
その前に敦子にメールを入れる。
今日は先にうちに来て料理を作って待っていてくれるらしい。
手料理だけを楽しみに今日の見回りも頑張ろうと思える。
あたしって単純。
3‐Cの教室。
明かりが付いていた。
亜美菜のクラスだがまさかな?
そんなことを思いながら閉まった扉をガラガラと開ける。
そこには亜美菜と見覚えのあるファンクラブの子が数人。
「あ、せんせーい!!」
(なんてこった…)
亜美菜があたしの名前を呼び手招きをするので、仕方なく近づく。
「ほら、学校閉めるから早く帰れ」
「帰るからさ、先生これ飲んでみて!」
そう言って差し出されたのは新発売と書いてあるラベルの飲み物。
亜美菜以外の女の子は帰る支度を大人しくしている。
「なに、うまいの?」
「うん!だから飲んでみて!」
ちょっと興味があった。
昔から新発売に弱いあたし。
でも、この時飲んだことは間違いだった―
ペットボトルを手に取りゴクリと飲む。
『じゃあ先生さようなら〜!』
「気を付けて帰れよー!」
この時だって、異変に気づくべきだった。
ファンクラブの子がいつも騒ぐのにこの日ばかりは大人しく帰ったことも。
クスクスと笑う亜美菜にも気づくべきだった。
「どお?先生おいしい?」
「うん、うまいなこれ!」
「それあげるよ」
「え?いやいやそれはいいよ」
確かにうまかった。
普通に好みの味の飲み物。
亜美菜の推しに負けて貰うんじゃなかった。飲むんじゃなかったと、後に後悔するなんて誰も思わない。
「あ、先生これわかる?」
「ん?」
施錠しなきゃいけないとわかってても、無視するわけにはいかないお人好しなあたしは椅子に座りノートを見た。
それから何故か友達のことで相談されたりと時間が経っていった―
まんまと亜美菜の策にはまってるとも知らずに。
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