StoryU
□Promise
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‐前田side‐
文化祭1日目も無事に終わり、私は今、明日の準備に追われている。
「あっちゃーん!これ、ここ?」
「あ、うん!」
クラスの出し物であるお化け屋敷も完成し、だいぶ怖いものとなった。
才加も貞子が様になってます。
みんな明日が楽しみすぎて仕方ないみたいで、優子なんかオバケの役の練習してるし、それ見て陽菜は呆れ顔。
「みんなもう終わったし、帰っていいからねー!」
『はーい!!』
ほんと元気だけはいいクラス。
そんなあたしはクラスの仕事を終えると教官室に向かった。
さっき高橋先生に呼び出しされて、ドキドキしながら廊下を歩く。
ガラガラッ―
「失礼しまーす…」
もう時刻が遅いからか中には高橋先生しか居なくて、そんな高橋先生も疲れているのか机に突っ伏して眠っていた。
寝ている先生はかわいくて、綺麗で…いつもの格好いい先生とはまた違う魅力。
そんな高橋先生の隣の椅子に座って、あたしも机に伏せて高橋先生を見つめる。
いつ起きるのかな…
起こした方がいいのかな?
でも、起こさない方がずっと一緒に居られる…
あたしはドキドキが止まらなくて、先生を想う度胸が苦しくなる。
「……んー………前田……さん」
「へ?」
驚いてガバッと起きあがると、先生は起きる様子もなくまだ眠っている。
「なに……寝言…?」
びっくりしすぎて、心臓がさっきよりも早く動く。
なんであたしの名前なんか…
先生、どんな夢見てるの?
きっとクラスの夢なんだろうね。
先生、みんな大好きだから…
あたしはクラスの生徒の1人に過ぎないもんね…
――――――――――――
‐高橋side‐
ハッと目が覚めて起きあがる。
「やっべー!!寝て…た……」
ふと横を見れば机に伏せて眠っている前田さんが居た。
あれ…もしかして…ずっと待ってたのかな…
呼び出しといて眠ってしまったあたしを起こさずに待ってた?
時計を見れば時刻は夜の9時を回ろうとしている。
周りの先生は当然居なくて、今日も施錠係りなため学校を見回らなければならない。
とりあえず…前田さん起こさなきゃ…
椅子から立ち上がり前田さんの隣へ。
スースーと寝息をたててる前田さんがかわいくて、かわいくて、ずっと見ていたいくらい。
ソッと髪の毛に触れる。
サラサラなその髪の毛を撫でていると前田さんは目を覚ました。
「おわっ!お、起きた?」
「…ん……先生?」
バッと手を離して、ごまかすために頭をポリポリとかく。
おっきな欠伸をして起きあがる前田さんは、どうやら気づいていないみたいでホッとした。
「あ…先生話しって?」
「あ、そうだ。えっと、明日の挨拶考えてるかなって…」
「先生に言われたから考えときましたよ?」
「あ、そうか。ならいいんやけど…」
なんか、なんか照れくさい。
前田さんと目が合うだけで、身体の体温が上昇する。
重傷だな…あたし。
「それだけのために呼んだんですか?」
ポカーンとする前田さん。
いや、機嫌悪い?呆れてる?
だって呼び出したのなんて口実で、2人で話したかっただけなんて言えるわけがない。
そりゃ呆れられても仕方ない…
「あー…まあ…」
「先生。心配性ですね」
くしゃっとした笑顔で笑う。
なんだ…良かった…
この笑顔を見るだけで安心する。
「………」
「………」
お互い見つめ合って何も話さない。
けど、居心地なんて悪くなくてドキドキ胸が高鳴るだけ。
「あ、もう遅いから送ってくけど先生戸締まりの確認してこなきゃいけないんだけど…待っててもらえる?」
「…一緒に行っちゃ…ダメですか?」
「え?」
「ここに1人で居るの怖いので…」
「あ、そうか。じゃー…一緒に行こっか」
恥じらいながら言う前田さんがかわいくて、抱きしめたい衝動にかられた。
こらえろ高橋…。
懐中電灯を持って教官室を出る。
もうすでに暗い廊下。
キュッと服の裾を前田さんに掴まれた。
「怖いのダメなんですよね…あたし…」
強がってるのかへへっと苦笑いして廊下の先を見る。
クラスのお化け屋敷平気なのか?なんて思ったけど、受付なのを思い出した。
あたしは怖がっている前田さんの手を引いた。
「え?」
「こっちのが安心するでしょ?」
これくらいいいよね?
手を繋ぐくらい。
少しの間だけ、デート気分味わったって、前田さんの好きな人に悪くないよな?
「はい…」
暗がりでよく見えないけど、俯く前田さん。
怖いのかな。
あたしは少しでも怖くないように、くだらない話しをしながら校内を回った。
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