StoryU

□Promise
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放課後―


‐前田side‐




浮かない足取りで高橋先生の居る教官室に向かう。




けど、先生は居なくて、他の先生によると屋上に行ったらしく、あたしは階段を駆け上った。




屋上へのドアを開けると胸に突き刺さる、あの歌声が響く。






―本気で忘れるくらいなら

 泣けるほど 愛したりしない―







先生…またあの歌、歌ってる…






「…お?前田さん?」



先生は歌をやめてあたしを見る。



あたしは気づけば先生の前まで歩いていて、紙を取り出して先生に突き出した。





「ん?どうした?」

「もう…ギターの練習しない…」


「…え?」

「もう…先生とは2人で話さない…2人で…居ない…」


「前田…さん?」

「もう…あたしは……」





ただ呆然とする先生。




あたし、いまどんな顔してるかな?





ポツリ、ポツリと雨が降り出す。




「先生、あたしには…佐江ちゃんが居るから…ちゃんと佐江ちゃんの傍に居なきゃね…」




精一杯の笑顔であたしは言った。





「サヨナラ…先生…」




紙を受け取らない先生をよそに、あたしは手を離した。


ひらひらと舞い落ちる紙。





雨粒は次第に大きくなる。





今にも涙が溢れそうで、あたしはその場を走って立ち去った。





先生はなにも言わず、追いかけても来なくて、あたしは1人誰も来ない教室で泣き崩れた。





「…っ……ううっ……せん…っせい………っ…」





先生が好き。


でも、佐江ちゃんを裏切れない。




先生、いきなりごめんね。





今まで本当に楽しかった。







先生への気持ち、忘れるね。






忘れるから…




―――――――――――――


‐高橋side‐



溢れる涙。


止まることを知らず、抜け殻のように壁にもたれかかり涙を流す。





雨はザーザーと降り、完全にびしょ濡れで、落ちた紙は文字が読めなくなっている。





なんで泣いてんだ自分。




"サヨナラ先生"




その言葉が頭から離れない。


なんでまた急に…




ああ、そうか。

宮澤となんかあったのか。





 
邪魔者は消えないといかんよな…


ギターを手に取り、雨の中ギターを弾く。





―誰かに盗られるくらいなら
  強く抱いて 君を壊したい―






そんなことができたらどれほど楽だろうか。


そんな勇気もないあたしは、ただの臆病者。





本当に最後の雨になったな…




ハハッ…





空を見上げて笑った。

落ちてくる雨が、あたしの涙を代弁しているかのように降りしきる。




前田さんが泣いていることも知らず、ただおいていかれたような、そんな悲しい気持ちになった。


最初から間違ってたんだ。





恋人がいる人を好きになった時点で―















雨に濡れた服のままでは帰れないので、着替えをしてから帰宅しベッドにボーッと寝転がる。



明日からは夏休み。




完全に前田さんと顔を合わすこともなくなる。




忘れるにはいい機会かな…





「前田さん…」






忘れることなどできるのだろうか。


こんなにもあたしの心を支配している前田さんのことを。





胸が苦しい…




苦しいよ…







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