StoryU

□Promise
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‐前田side‐


あれから、高橋先生に抵抗はなくなりすれ違えば普通に話すほどになった。



屋上でギターを弾いているのは先生たちしか知らない秘密みたいで、あたしは高橋先生の秘密を知ったみたい。



あれからたまに屋上に顔を出したりして、先生の歌声を聞いている。






そんなある日の放課後ことだった―







「あっちゃんじゃーねー」

「ばいばーい」


「佐江ちゃんとお幸せに〜!」

「優子うるさい!!」




陽菜と優子。

相変わらずの2人で、毎日変なことばかりして楽しんで、さっさと学校から帰って行く。






そんなあたしは今、佐江ちゃんの部活が終わるまで教室で待っているところ。


みんな足早に帰り、ガラーンとなった教室。







ガラガラッ―


佐江ちゃんかと思って、ドアの方を振り返ればそこには高橋先生が顔だけ覗き込んでいた。




「前田さん発見!」

「どうしたんですか?」



あたしを探してた?





ドクン―





また、まただ…





「ジャーン!!」



先生が持っていたのはギターで、あたしは首を傾げた。




「あ、そうか、えーっと…これ左利き用のギター」



先生はあたしに近づいて、隣の席に座る。




「え…なんで…」

「ん?こないだ弾きたがってたから、友人に貰ってきちゃった!」





嘘…なにこの人……


ドキドキと胸の鼓動は高鳴る。




「はい、持ってみれば?」




ギターをあたしに渡して、あたしは抱えてみる。




「お、似合うな〜!」

「ホントですか?」



なんだか嬉しくなって、あたしは笑った。




「少しずつコード覚えてみる?」

「…はい!!」




新しい玩具を与えられた子どものようにあたしははしゃいで、高橋先生も笑うからなんか嬉しくて…



あたしは夢中で練習した。







「違う!そこはこことここ!!」

「え?こおですか?」


「あーもう―」






…え?


ふわっと香る先生の匂い。



香水の匂いなのかとてもいい香りで…って!!そうじゃなくて!!





先生に後ろから手を取られて、指を移動させられる。


これが手取り足取りって言うのかな…






ドキドキとうるさい心臓の音。

先生に聞こえちゃうんじゃないかってくらいに。



それにいま絶対に赤くなってる…





「これだよ、これ。覚えた?」

「は、はい!」


「で、次は―」






ガラガラッ―




「あれ?高橋先生?」

「おー宮澤!」 





た、助かった…

あたしはホッと胸をなで下ろし、深呼吸をして佐江ちゃんを見た。


佐江ちゃんがそんなあたしに気づいていたのも知らずに。





「佐江ちゃん、お疲れ」

「おう!待たせてごめんね?帰ろっか!」


「うん!あ、先生ギターありがとうございました。またお願いします」

「もちろん」




あたしはギターを返して、佐江ちゃんと教室を出た。






胸のドキドキはまだ収まらなくて、早く先生の傍から離れれば大丈夫だと思っていたのに…


佐江ちゃんと繋ぐこの手に、あたしはまだ先生の温もりを感じてる。






イケないとわかってるから、気づかないフリばかりしてた。







でも、やっぱり今日気づいたんだ。






あたし、先生のことがすごく気になってる…



ううん。






多分、あの笑顔を見たときから恋に落ちたんだ―







でも、優子も好きなんだよね…






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