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□些細なこと
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「ねーちょっとあの2人どうしたのかな?」
「喧嘩したみたいよ」
「喧嘩!?」
「理由までは知らないけど」
高橋の後ろの方から優子と麻里子さまの声が聞こえてくる。
そう、只今陽菜と喧嘩中。
高橋は悪くない。
それは昨日の出来事で―
高橋の家に陽菜が来ていて
『たかみなこれなに?』
『あ、それ…なんで…』
陽菜が持っていたのは、敦子の指輪。
この前来たときに忘れていったのだろう。そして陽菜も敦子のってわかってる。
『なんで枕元にあんの?』
『いや、高橋に言われても!』
『一緒に寝たの?』
『だってベッド1つしかないし…』
『あ、そう』
それっきり陽菜は口聞いてくれないし、別に一緒に寝たからって何かあったわけじゃないのに怒る理由が高橋にはわからん。
敦子は親友やし。
そんなこんなで今に至る。
「みなみー謝れば?」
いきなり高橋の隣に来て、麻里子さまが呟く。
「いや、高橋悪くないんで謝りません」
「出たっ!頑固ちゃん!」
「謝れよー。彼女いるのに他の人と同じベッドで寝るなんてよくないぞ?」
「にゃんにゃんだっていつも優子と寝てます」
麻里子さまは"確かに"と頷いて、腕を組み考え出した。
「でもさー2人仲悪いと、みんなに伝染するんだよね」
そう言って辺りを見渡すと、佐江ちゃんとゆきりんが険悪ムード。
優子と敦子、才加とともちんまでもが険悪ムード。
いや、高橋のせいじゃねーだろ。
と突っ込みを入れて、意地でも謝らんと麻里子さまに伝えるとまた"頑固ちゃん"て言われた。
そんなこと言われてもしょうがないっす。
すると、背後からポカンと高橋の頭を叩かれ、誰だと思って振り返るとそれは陽菜でした。
「ちょっとたかみなもらうよ」
そう麻里子さまに告げて、楽屋を出る陽菜と高橋。
「ちょっ、なに!?」
「何じゃないでしょ!?」
「はあ!?よくわからん!!」
なんだなんだなんなんだ?
いくら高橋でも理不尽に怒られると腹が立つ。
ただでさえずーっと口きかなかったくせにこれだもん。
「そんなに陽菜怒らせたい?」
「はい!?意味わからん」
「ばか!ほんとにばか!!」
「なっ!ばかっていう陽菜の方がばかだよ!!」
小学生の口喧嘩かって言いたくなるくらい、低レベルな口喧嘩。
「あーもう!………ごめん……」
「…へ?」
いきなり陽菜が謝るもんだから、拍子抜けしてしまったよ。
「もう、陽菜が悪かった。ごめん。だから……仲直りして下さい…」
「え?…どうしたの?」
滅多に謝らない陽菜だからこそ驚くし、何よりこの泣きそうな顔!
萌える…じゃなくて。
「…たかみなと喋りたいし、触れて欲しい。……陽菜のヤキモチだったの」
「…陽菜」
妙に素直だと思えばそういう理由ね。
「あたしこそごめん…気づかなくて」
「…ううん」
そう言って首を横に振る陽菜。
あたしは陽菜の手を掴んで言った。
「はい、これで仲直りね?」
「…ばか」
やっぱり素直じゃない。
ま、そんな陽菜が好きだけどね。
そのまま手を繋いで楽屋に入れば"声でけーよ"なんて言われたのは言うまでもない。
End