雨飴、時雨!

□01.あんぱんとおしるこ
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(side.山崎)



某、廃墟の天井裏。



僕は3日前から副長に任され
ここに忍び込み、
監察の任務を行っている。



なにかと黒い噂の多い組織だけに
慎重に慎重を重ね捜査している。



地味だ地味だと言われ
馬鹿にされている僕だが、
その地味さのお陰で、
この仕事に関しては
自信を持ってこなす事が出来る。



監察や密偵に
華やかさなんて必要ない。


むしろそんなもの邪魔になるだけだ。


ただ静かに、黙って、
人知れず任務を遂行する。



僕にもってこいの職種だ。



そして今回もいつも通り、屋根裏で
悪党達の会話から情報を得る。



「(ふぅ…もう情報もだいぶ集まったし、屯所に戻るか。あ…でも、零兎くんがまだ帰って来ないな…。)」



小1時間前、僕の部下で、
監察見習いの零兎くんが
食べ物を買ってくると
行ったっきり戻ってきていない。



「(まさかどこかで捕まったりしてないよね…)」



とりあえず屋根裏から顔を出し、
誰も居ない事を確認し
庭に降りると、裏門から
走ってくる零兎くんが見える。



「(ふぅ、良かった…これで一緒に出れる)」



安心したのも束の間、
僕が居ることに気付いたのか
にこやかに微笑み、
手をふる。………そして。














「退くーん!あんぱん買ってきたよー!」





「ちょっ…!零兎くん、声がデカいよ…!」




『何者だ!』




…………最悪だ…!


 
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