男主

□三毛猫と詐欺師
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お昼休み中の
立海大附属中学。



各所で賑やかな声が響く中、
中庭のとあるひっそりとした木陰に
小走りでやってきたひなた。



コンビニの袋を抱え、
辺りをキョロキョロと見回し、
誰も居ないことを確認すると
袋からパンを取り出す。



「おーい、にゃんこー?
お昼ご飯、持ってきたよー?」



「にゃあ〜」



「あっ、いたいた!ほら、パンだぞ〜」



ひなたが呼び掛けると
どこからか現れた三毛猫が
甘えるようにすり寄ると
ひなたは嬉しそうに
パンをちぎって
猫の口元に持っていってやる。



「おいし?牛乳も買ってきたよ!」



「にゃあ…!」



ニコニコと猫と
会話をするひなた。



4日程前、偶然中庭で見かけて以来、
それから毎日、
ひなたがエサをやっている。



「あはっ、可愛いなー、もう!」



身体をスリ寄せてくる猫の
喉もとを撫でてやると、
コテンと倒れ、ジャレてくる。



「ひなた、何をしている」



「っ、真田副部長!?」



突如後ろからかかった声に、
ひなたも猫もビクりと立ち上がる。



「お前はまた校内で
野良猫にエサをやっていたな」



「いやっ…その…」



ひなたは以前にも真田に校内で
野良猫にエサをやっている所を
注意されていた為、
目を泳がせ、必死に言い訳を探す。



「まったく、たるんどる!!」



「ごめんなさいっ…」



真田の声に目をギュッと瞑り、
下を向くひなた。



「ククッ……」



「……へ?」



ひなたが当分の間しぼられるのを
覚悟していると突然笑う真田に
疑問符を浮かべ首を傾げる。



「お前もまだまだじゃのう、ひなた」



「あぁーっ!
仁王先輩だったんですか!!!」



「…プリッ」



帽子とウィッグを取ると
ひなたに向かって舌を出す。



「お前さんのビビった顔…
実に愉快だったぜよ」



ケラケラ笑いながら、
しゃがみ込むと、
ひなたの足元に居る猫に、
チッチと言いながら手を出す。



「にゃあ〜…」



出された手に、
おずおずと寄って行く猫を
抱きかかえる仁王。


 
「もう…前も副部長に見つかって怒られたからビックリしましたよ…」



「俺も前に柳に見つかった時は、お前さんに頼まれたと言っておいた」



「勝手に人のせいにしないで下さい!!」



三毛猫と詐欺師



(にゃんこ、今日は
仁王先輩が猫缶買ってくれたよ!)

(ひなた、何をしている)

(っ!副部長…!って、
もう騙されませんよ、仁王先輩!)

(仁王?何を言っている)

(ひなた〜、皿持ってきたぜよ)

(……へっ?
仁王先輩が2人…?じゃあ本物!?)

(このたわけがっ!!!)

 

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