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10/23(Tue) 23:45
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「俺なんか行っても行かなくても一緒です。先生だって気も留めないですよ」
「そんなことない。先生は学生シンポジウムの時に出たときから星川君に目をつけていたと言っていたよ」
「わけないでしょ。あれなんて俺は一応チームに居ただけってぐらいのもんで・・・」
「謙遜するなよ」
「すみません。急ぐ話じゃないならあとで。俺今片づけなきゃなんない仕事があるんですよ」
「ああ、ごめんね。それじゃ後で」
(来なくていいんだよ)
「ついでに。君の退所についてだけど」
「!」
「僕は反対だからね」
「所長が話したんですか」
質問には答えず、井波はすたすたと歩いて自分の研究部へと戻る。
出て行った扉が閉まった瞬間、机を思いきり殴りつけた。
「くっそ。くっそ、くそ」
本当はなにか言い返してやりたい。だけどそれはできない。
あいつは客員研究員。文字通り「お客さま」なんだ。
「また井波になにか言われてたみたいだな」
「見てたんなら助けに入るとか、なんとかしてくれよ」
「いやあ、傍から見るぶんにはけっこう面白くてな」
「・・・・」
「えっと、悪かったよ」
「毎日毎日、仕事中にたびたびちょっかい出されてみろよ。ストレスでおかしくなっちまう」
「俺がお前になにかしたかってンだよ!あの野郎」
「うんうん」
「なんでよりによって俺が入所したのと同じ時期にあいつがきやがったんだ」
「どうせ病院から出るんなら海外の研究所にでも行っちまえばいいのによ」
「うんうん」
「真剣に聞いてんのか?」
「まあまあ。俺にはよくわかんないけどさ、井波がお前にかまうのはお前が大人しくしないのが気に入らないからじゃないのか」
「大学病院の先生としてはちゃんと全員をしめておきたいんだろ。プライドが高いのさ」
「あいつがそんなくだらないこと気にするようには思えない」
「なんだよ。嫌い嫌い言ってたくせに今度はかばうのか」
「そういうことじゃない。ただ井波が俺を監視するのはなにか違う理由があると思うんだよ」
「監視って、そりゃ考えすぎだろ」
「そう言ったっておおげさじゃない。あいつ、俺の行動すべてを警戒してるというか」
「星川。お前そうとう疲れてるみたいだな」
「真剣に話してるんだよ!」
「井波は異常だ。何が目的かはわからないけど、とにかくあいつは・・・」
「・・・・」
「悪い。変な話聞かせたな」
「いや。俺こそ茶化したりして悪かった。かなり追いつめられてたみたいだな」
「お前がここを辞めるって話、あいつにばれたのか」
「なんで知ってるんだ」
「星川たちが話すのを覗いてた時、お前がいきなり驚いた顔してたからな」
「もしかしてと思ったのさ」
「ああ、知られてたよ。所長だろうな。言洩らしたのは」
「大方お前を説得してここに留めさせるように言われたんだろう」
「今更遅いんだよ」
「もうずっと考えてたことなんだ。所長も井波も、あいつらがどう言おうと関係ない」
「個人的なこと言わせてもらうなら、俺もお前には辞めてほしくないんだけどな。話し相手がいなくなっちまうよ」
「まじめに仕事してろよ」
「やる時にはやってるからいいんだよ。お前はいいの。愚痴こぼす相手がいなくなっても」
「ああ。ここの上司から離れられたらストレスも無くなるだろうからな」
「あっはっは。ひでぇな」
「なあ、深谷。お前はこれからもここで――」
「少しいいかな」
「・・・・」
「あっ。ああ、じゃあ、俺は戻るから」
「深谷くんもいてくれていいよ。僕の用事はすぐ終わるから」
「いや、何度もおじゃまして悪いね。昨日見せてもらった高血圧ラットの実験レポートのことでちょっとね」
「俺、資料室に行かなきゃならないんで」
「あれ。さっきまでおしゃべりしてたじゃないか」
「失礼します」
「あそこまで嫌わなくっていいじゃないか。ねえ、深谷くん」

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