イナゴ

□嗚呼、神様はなんて残酷…
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部活が終わってもうくたくたで…
帰り道は薄暗かった
車のライトが光ってて、家やお店の光も窓から零れていた
俺と松風はいつも一緒に帰っている
なんでか…
松風は入部当初から俺につっつきかまってばかりいた
改めて雷門イレブンの一員となった俺はまだ明るい道ではなく、薄暗い夜道を歩く事が多くなった
部活動は結構大変 驚いたが、俺の体力はまだほんの少し残っていた
しかし、円堂監督が急にいなくなり
雷門の新監督は鬼道監督になった
鬼道監督の練習は今まで以上に体力を使う
俺の松風もふらふらだった
だからなのか…
俺は信号が赤に変わるのに気付かなかった
ぱぁーだかぷぅーだかににた耳をつんざくほどの車のクラクション音
俺はそっちの方を見ると目が眩んだ
眩しいというレベルを超えた車のライトが視界いっぱいに広がった
そこで我に返り 飛んでいた意識が戻る
信号は赤だった
俺、一人が道路にたっていた
車が間近に迫る恐怖に俺は足が動かなかった
ただただ驚いた表情で車の方をみた
その時、ドンッという鈍い痛みが左腕に広がる
誰かに押された
直ぐにまだ 俺とは違うドンッという音が聞こえた
俺は今までいた場所を見ると車があった
その数メートル先には倒れる松風の姿があった
俺は駆け足で彼の元へと急ぐ
上半身をゆっくり起こす
松風の頭からは赤い液体が流れ落ちる
「松風!」
「…あ、剣城… 剣城、平気?」
か細くゆっくりした声で「剣城、剣城、」という
何が平気か
俺は精神的に平気ではない
「剣城、俺が死んでも泣かないでね?俺の事忘れて、いい人と付き合って」
血で染められた手で俺の手を握る
そこで目を瞑る
何もかもがおわってしまったような顔で眠りにつこうとする、永遠の。
やめろ、まだ正気はある 大丈夫だ
何度も声に出したし、俺自身にも言う
しかし、救急車が来るころには既に遅かった






同じ部活、同い年、友達?
いや、恋人
そいつの墓の前
俺は無表情すらできなかった
俺が殺した
俺がぼっーとしてたからこいつを殺したんだ
そう思うと悔しくて、悔しすぎて涙すら出なかった
「剣城…」
後ろを向くと、神童キャプテン、霧野先輩
音無先生、鬼道コーチ
ああ、円堂監督 戻ったんですか
部活の面々がいた
何故かその時 涙があふれた
「う、っく…っ…」
「剣城、」
泣き崩れる俺の肩に神童キャプテンは手を置く
「剣城 今日、天馬のロッカーを整理してたんだ そしたらコレが…」
俺は涙をぬぐい、顔を上げた
霧野先輩が綺麗にラッピングされた箱を差し出す
俺は受け取った
メッセージカード
それには「剣城へ 誕生日おめでとう」と書いてあった
事故の次の日は俺の誕生日だったっけ…
事故の後 俺はずっと部屋にこもりっきりだった
そういやぁ食事が豪華な時があったな…
俺はラッピングを綺麗にほどき、中を見る
中には俺が前から目をつけていたスパイクがあった
スポーツショップの前を通った時に呟いた言葉を、松風は忘れてなかったってことか…
「スパイク…」
「実は天馬 剣城の誕生日パーティーも企画してたんだ だけど…」
「っ…」
『俺の事忘れて、いい人とつきあって』

バカだなあいつ
俺が松風の事忘れられるわけないのをしってて、
しかも、なんだ 他のヤツと付き合えってか?
んなの…
「無理にきまってんだろ……」
俺は再び泣き崩れた

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