イナゴ

□記憶喪失なんて、なくなってしまえばいい
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俺はよく考えればブラコンだった
弟の快彦の事を好いていた
小さい頃は体格差は激しくなかったが、
学年が上へ上へと進むごとにそれは激しくなっていった
1つしか違わないのに、快彦の成長は進まなかった
だからだろうか
俺よりもはるかにチビな快彦のことを「チビチビ」いうようになった
「チビいうなよ!」
「チビ」
そのふくれっ面がみたくて、もっと言ってしまう
しかし、心なしか
その言い合いの後 快彦の顔は赤くなっていた
「何、なんで赤くなってんの」
「なっ///兄さんには関係ないだろ!」
ひょいと小さい体を抱き上げて目線をむりやり合わせる
「関係あるだろ 熱だったらどうする それともあれか?俺に『チビ』って言われて嬉しいのか?」
自分でもわかるニヤついた顔でいってやると
つま先から頭のてっぺんまで真っ赤な林檎みたくなった
快彦は目線を下に下げて「そうだよ…」と小さく言った
その「そうだよ」がどっちの「そうだよ」か俺には分からない
…いや、快彦が赤くなってるから「俺に嫌味を言われて赤くなった」方の「そうだよ」だとは思うが
もしそれが「熱」の「そうだよ」だったら
俺は自意識過剰という事になる
極力そんな事はさけたい
「どっちの『そうだよ』?」
「え、兄さん 鬼畜?そんな事言わせるの?///」
「…」
更に真っ赤になった快彦の顔
カワイイな…
「…いってみろよ(黒)
「黒っ!黒いよ、兄さん!」
多分俺の背後にはいつもの化身オーラではなく
どす黒いオーラが流れ出ている事だろう
「うぅ……その、兄さんに『チビ』って言われると…なんか、その…」
ああ、こいつは俺の事が好きなんだ
なんなんだこいつ 淫乱か?
「お前は淫乱か」っていいてぇが
まぁこいつの事だ
淫乱…なんて卑猥な言葉も知らないだろう
…卑猥って言葉も知らなそうだよな…
「お前、俺の事好きだろ」
「え///」
あ、やばい その顔可愛い
なんだこの可愛いいきもの
ほんとに俺の弟か
「そう、かも……わああああああああ 俺、ブラコンだったんだぁぁぁあ うわぁぁ 兄さん!お願い!キライにならないで!!」
こんどはがっしりと服を掴んできた
うるうるの涙目で必死にお願いする姿はほんと
吐血してぶっ倒れそうなレベル
「どうしようかな… ブラコンの弟なんて… 俺、恥ずかしくて学校いけねぇかも…」
もっといじめてやる
「ううぅ…お願い!キライにならないでぇ」
今度は俺の上半身にがっしりと捕まる
ちょっとやりすぎたか?
俺は快彦の頭をなでてからデコキスする
「へ?」
「俺も好きだよ、快彦」
「!!兄さん♡」

その次の日、快彦は事故にあった




快彦が事故にあって一週間がたった

あれ以来目を覚ますことはなかった
俺は毎日見舞いにきた
また今日も目を覚まさない
俺が帰ろうとイスをたったその時
「ん…」という一週間ぶりに聞いた愛しい、
か細い声が耳に届いた
「快彦!?」
俺は先生を呼ぶのも忘れ、快彦にかけよった
「…」
快彦は低血圧だ
寝起きはぼっーとしてる
その顔が今目の前にあった
そうした快彦
お前の兄兼恋人が目の前にいるんだぞ
なんか話せ
「…あ」
「快彦」
「…あ、貴方は、誰ですか?」
想い衝撃が俺の中に走った




先生によると記憶喪失らしい
それも特殊で、1日立つと昨日あった事すべてを忘れてしまうらしい
今日も快彦は空を見ていた
「快彦 お前の好きなプリン持ってきたぞ」
「…誰…」
「お前の兄の総介だ そして、恋人でもある」
「…兄弟なのに恋人なの?」
「そうだ 俺とお前は愛し合っていた」
「…そうなんだ…」
快彦にプリンとスプーンを渡す
もくもくと美味そうに食べる快彦は可愛い
「…ねぇ」
「なんだ?」
「…男同士は結婚だきないんでしょ?後、兄弟も…」
「ああ、そうだが…」
どうやら一般的な知識は分かってるらしい
なのに、なんで俺の事は…
「なんで、俺は君の事を愛してたんだろう…」
君…
君、か…
兄さんとは言ってくれないのだろうか…
「快彦」
「何?」
俺は快彦が振り向くと、抱きしめた
「え、ちょっと?」
「快彦、お願いだ 俺の事『兄さん』って呼んでくれ」
「あ、うん…」
「…!」
快彦の小さい手が俺の背中に回った
抱きしめてくれてるんだ…
「兄さん…」
「快彦…」



「じゃあ、また明日な 快彦」
「またね 兄さん」
俺は病室のドアを閉めた
唇をかみしめる
折角兄さんって言ってもらえたのに
明日になればその記憶は跡形もなく消えてるんだろう

ああ、記憶喪失なんて、無くなってしまえばいいのに…

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