蜜雨

□02:懐かしい歌を
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「…行こう」


とにかく誰も"私"を知らない
土地へ行こう…ここにはいたくない
もう、戻れない…帰れないのだから


「…どこへ、行くというのだ?」


いきなり現れた気配に目を見開く
真っ正面に立つのは…黒装束の男

忍者が昼の時間に動いているのが
珍しい気もしたがそんな場合ではない


「ここではないところ
この町から出たいの。通して。」


「…質問を変える。
この町から出てどうする?
その身一つでどう生きていく?
俺が納得するまで
お前をこの町から出さない」


「貴方には関係ない」


「答えろ」


「…………
…私は私を守りたい。
私を見つけたい。心の居場所を探したい」


今までの私は…
ただの道具だったのかもしれない
そう思うほど涙が溢れそうで


「…俺は「いたぞ!!捕まえろ」


「…!?…逃げな、きゃっ!!」


ふいに黒忍者に背中と膝裏を腕を回され
お姫様だっこの格好になる


「!!?ちょっと…!?」


「俺はお前と共にある…
ずっと、待っていた、この時を」


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