中編

□眠りに
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朝、自分の家のベッドで起きると手が血まみれだった。
誰か殺したんだろうな、とぼんやりと思う。

私の中にいるもう一人の私が。
死喰い人である私が夜のうちに。
涙が伝うのはきっと罪悪感からだ。

全部は思い出せない。だけど途切れ途切れの記憶がよみがえってきた。
私は二重人格だ。私を助けようと生まれた人格が罪を犯しているんだ。
消さなければならない。これ以上罪を犯しちゃいけない。誰かを傷つけちゃいけないんだ。

わかってる、わかってる。
だけど、私が自分を守る為にうんだ、私を守る為にうまれた彼女。
その彼女は私はまた自分の為に消そうとしているのだ。助けてくれた彼女を。

「助けて」
視界が歪む。さっき流れ出た涙がまだ止まってなかったらしい。
歪む視界の向こうで青白く光るぼんやりとした犬が見える。

「助けてシリウス」
その犬は一度だけ私の方を振り返ってそれから真っ直ぐと走り出した。
私の守護霊はきっと彼を呼んでくるのだと思う。来て、くれるだろうか。

赤い赤い手のひらを汚したのは誰だろう。
私が泣く度にもう一人の私も泣いていた気がする。
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