中編

□眠りに
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「泣かないで」
優しい声。
私の髪をなでる暖かい手。

「貴方は強い子でしょう」
もう泣いちゃだめ、とそう言って。
私を強く抱きしめて彼女は、彼は、誰だか知らないその人は、耳元で言うのだ。

何て言ってたか忘れてしまったけれど。
(名前も姿も何も思い出せないの)

無事に魔法学校を卒業した私は騎士団に入った。
自分で言うのはどうかと思うがグリフィンドールの中でも正義感は強い方だった。
真面目で成績も悪くはなかったし、人の役に立ちたいとも思っていた。
だから、騎士団に。間違ってはいないと思う。妥当だろう。

在学中はあまり関わりのなかった人たちと今は楽しくやってる、と思う。

「ねぇ、そこで眠っている犬はシリウス?」
座っているリーマスの膝に頭を乗っけて寝息を立てている黒い大きな犬。
迷惑そうにするでもなく緩やかな笑みを浮かべてリーマスはその犬を撫でている。

「そうだよ。さっきまでジェームズを遊んでて、疲れちゃったみたい」
くすくすと彼は笑う。
言われて周りを見ればボールだとかフリスビーだとかが転がってた。
結構、本格的に遊んでいたらしい。苦笑がもれる。

私は今、正しい、正義の中にいるんだろう。
胸を張ってそう言える、そう思っている、だけど。
(時折、とても胸が痛くなるのが何故かわからないの)
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