中編

□aster
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「死にたいと思ってる訳じゃないよ」
話の流れからか、彼女が口にしたのはそう明るい話題ではなかった。

「ただ、生きていたいと思わないだけ」
いつもと同じ、変わらない無表情で彼女は言う。
生きる理由が無い、と無表情で無感動な声で。
まるで人形のように。

「…それでも貴方が死ねば誰か悲しむ」
引き止めたいと思ったんだろうか。

「どうかな。誰も気にしないだろうけど」
死なないで欲しいと思ったんだろうか。

「そんな事ない…僕は悲しい、と思う」

彼女の生きる理由になりたいと思った。

少しだけ驚いた表情をした後、彼女は泣いてねとだけ言った。
無感動なその声がやけに寂しく聞こえる。
きっと僕は彼女の生きる理由にはなれない。分かってる。
分かったから、だから、寂しいと思った。

「幼い頃は好き嫌いとか、もっとあった気がする」
ホグワーツに行く、周りが忙しく騒がしい中彼女はぽつりと呟いた。
これからきっと戦うことになる筈なのに菊花は微塵もそんな感じをさせていなかった。
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