中編

□aster
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「それ、もらっても良い?」
フォークを口に含みながら白い細い指が手をつけてない皿を示した。

食欲が、無かった。
別に特別な感情を抱いていた訳じゃない。
いや、どちらかといえば嫌悪していたんだろう。
それでも、人が目の前で殺されるのを見るのは正直きつかった。
その後の食事がいつものように進まないのは当然だろう。

「あ、ああ…」
それでも自分とそう年齢の変わらない少女は顔色一つ変えずに僕の差し出した料理の乗ってる皿を受け取った。
ありがとう、とお礼を口にして無感動に食事を続けてる。
よく、食べれるものだ。人が死ぬのを見ておいて。

「いやしい子だね。あんたと同じ空気吸うのも嫌だ」
菊花という名前のその少女は真向かいの席に座ってる。
少し離れた場所にいる伯母さんが嬉々として彼女にそう言った。

「全く可愛げがないしそう役に立つ訳でもないのに」
何を言われても言い返す事無く菊花は食事を続けてる。
感情を何処かに置いてきてしまったようなその少女の事を母が言ってた。
哀れむように、そして諦めてしまっているように。

まるで彼女は人形の様だと。そう言ってた。
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